NUMBER GIRL
ナンバーガールの音楽よく、攻撃的なサウンドや、独特な詩の世界、 独特な曲調が取り立たされるのだけれども、それでもこのバンドは 何か他のバンドとは一線を画しているなと思う。
音も強烈なのだが、何かポリシーというのか、スタイルというのか、上手く言えないけど そういうのが、他のバンドとは何か違う。
なんか焦燥感いっぱいで爆発してるサウンド、しつこく繰り返され、支離滅裂で、あまりにもそのままで恥ずかしくなる歌詞、 気持ち悪いコード、・・・、何なんだろう。
またそれが、私をゾクゾクさせるんだけど。

どうもナンバーガールの音楽は音楽というより映画なのじゃないかと思う。
いや、そうとしか思えない。
このバンドの中心人物の向井氏はかつて映画監督を志した事がある そうだ。

だからだろうか、向井氏のギターが曲の中でも重要な役割を 持っている。
向井氏のギターが曲をリードしている曲が多い。
ずっと曲を聞いているとこの音は映画の映写機が回っている音のように私は思う。 あの、カタカタという音。
その向井氏のギターによってフィルムが回り他のメンバーにより フィルムに写っている映像が描き出される。
この映像には音声はない。
その無声映像に、向井氏によって映像の解説が吹き込まれる。
彼らのサイトのレコーディング日記を見ていると、レコーディングでは、 バックトラックを先に録音して、向井氏のボーカルを後から、 ワンフレーズずつ入れるのだそうだ。
なんか、本当に映像に解説を入れているようで面白い。

そしてその映像もただの映像じゃない。
普通の映画は目を開けて見ている映像だが、
彼らの映像とは目を「閉じた時」に見える残像。
だから背景が黒っぽくて、赤や緑が多い。
(後述する映像作品「騒やかな演奏」は赤や緑の光が多用されている。)
まるでネガフィルムのようだ。

ナンバーガールの音楽が歪んでいて攻撃的だと言われるのも
目を閉じた時に見える残像を音にしようとしているからだろう。
そしてひさ子ちゃんのナイフのような鋭いギター、アヒト君のでかい力強い ドラム、中尾憲太郎のスピード感のあるベースはその映像を描くにふさ わしい。
決して向井のワンマンバンドになっていない、メンバー個人のプレイが 光るのもこのバンドの大きな魅力の一つだ。

ライブは基本的にはその映像の上映会である。
無声映画に向井氏による解説が加えられていく。
音源とほとんど同じはずなのだけど、それでも同じ演奏というのがなくて、 毎回毎回映像が変化していく。
まばたきとまばたきの間に映った、消化しきれていない生々しい記憶が、自分にも カタカタと映写機が回って突然よみがえって来るようで、それがまた私を興奮させる。

ところでナンバーガールは数々の音源、映像作品を出している。
各作品によって段階がふまれている。

まばたきによって映される残像をそのまま記録していく。そうする中でだんだん感情に圧倒されて、 しまいに映写機を放してしまう「SCHOOLGIRL DISTOTIONAL ADDICT」。

その映像を上映した模様を納めたライブ盤「シブヤROCKTRANSFORMED状態」。

その記録された映像に、さらに残像がひんぱんにわりこみ、映像が編集されて いく「SAPPUKEI」。

彼らが行っているライブが、客にどうまぶたに焼き付けられたかを表現しようとした「騒やかな演奏」。

ライブ会場限定発売の上映会の記録「記録シリーズ」。

そしていよいよ、記録された映像の中身に触れた「NUM-HEAVYMETALLIC」。

ところで ナンバーガールは2002年11月30日の札幌のライブで解散した。
理由はベースの中尾憲太郎が脱退するためという事らしいが、ナンバーガールが「NUM HEAVYMETALLIC」でコンセプト的に一応の完結を迎えたからなのかもしれない。
もし、解散していなかったら次はどういく予定だったのだろう?
とても気になる所ではある。

最後にCDでライブ盤、そして映像集「NUMBER GIRL」がDVDで発表された。
後者の方はドキュメンタリーだそうだ。
ああ、ついに自分たちの姿そのものも映像にしてしまった。
ひょっとしたら「最後はドキュメンタリーを出す。」ってあらかじめ決めていたのではないか?
それほど、何かぴったりくる。
まだ内容は見てないのだけど、それにしてもナンバーガールはとことん「映像」なバンドだなぁと思う。

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