烈血風雲

領銜主演 徐少強 劉家輝 劉家良 他

 邦題『野獣たちの絆』。例によって主要登場人物の殆どが死に絶えるノワール物。區耀國歌うところの『Final Countdown』廣東語版をバックに、徐少強演じる『阿強』と劉家輝演じる『阿輝』のボクシング場面が、妙に粗いセピア色の画面で流れる。過去のシーンを通してこの二人が親友である事を強調している場面であるが、歌が歌だけに其の物語の結末を暗示し、悲しい事だが笑いを誘ってしまう。

 10年後、阿強は黒社会のボス・チャン配下の殺し屋となり、表向きは船乗りと言う事になっている。彼は過去、殺人指令を遂行するにあたって誤射を起こし無辜の人を手に掛けたせいで、殺しに銃を使わない事をポリシーに殺し屋家業を続けていた。しかし、彼は終に、自分の妻と息子の為に黒社会から足を洗う事を決意し、ボス・チャンに其の事を申し出る。チャンは其の事を快諾したが、彼が足抜けする事で自分の情報が漏れる事を恐れ、彼を殺す算段に出た。彼の車に仕掛けられた爆弾が、彼の目前で炸裂し、妻と息子の命を一瞬で奪う。二人は彼の身代わりになった形で殺されたのである。辛くも脱出した阿強は一人の娘に助けられる。彼女はムイ、嘗ての幼馴染にして親友、阿輝の妹だった。だが、阿輝は彼と正反対の刑事となっており、彼は今の殺し屋である自分を阿輝に告げる事が出来ずにいた。阿強はムイを次第に愛するようになるが、そんな彼をチャンが見逃す筈はなかった。其の魔の手はついに阿輝、ムイの側に迫った!

 徐少強堂々の主演作。殺し屋だが非常にナイーブな、優しい心を持ってしまった悲劇の男を彼ならではの演技力であるときは恐ろしく、あるときは何処までも優しく演じている。一方で彼が家族や阿輝兄妹と過ごしている其の瞬間、彼の微笑みは余りにさわやかで悪意や非情さを微塵にも感じさせない。しかし、銃を使わずに殺す彼の殺人法は余りにも残酷で、却って恐怖を煽る効果がある。食事中の男がフォークを口の中に入れた瞬間、其の手を叩いてフォークをそのまま喉を貫通させて殺す、船の上で小便している男を水面から槍状の物で股間を突き刺し殺す、又割れたガラス瓶で男のナニを切断するなど、残虐この上ない仕業をこれでもかと言わんばかりに見せ付けてくれる。自分の正体が露見し、阿輝に殴られても彼は弁解もせず、只殴られっぱなしで抵抗もしない。そして彼が去った後で頭を抱えて悲しむ様は不器用な、ナイーブな心を見事に表している。こうした劉家輝との『男の友情』もさりげないが実に印象深い。妹を殺され、阿強と共に復讐を行う事を決めた阿輝が罠に落ちた阿強を助けるシーン、阿輝が暴れるのを自分は何もせず、涼しげな顔で一服、しばき終わった阿輝を見て、お互いに何も云わず只口の端を歪ませて笑い、肩を組んで歩く姿は実にカッコイイ。しかし、最後に彼は阿輝を助ける為、自分のこれまでの人生に決着を付けんが為に再び彼に別れを告げる。『あの世で又遭おうぜ』彼は妻子が死んだときと同じく、ボス・チャンと共に車の中に仕掛けたダイナマイトでチャン諸共消し飛んだ。彼は自分が原因で死んだ人間に侘びをする為、これ以上親友を傷つけない為に自ら命を捨てる事を選んだのである。余りにあっけなく、しかしこの衝撃的なエンディングは徐少強にしか赦されないだろう。『精武門』で陳真が選んだ戦いの中で死ぬのとは明らかに違う。彼は自らの意思で、自らの手で爆破装置に手を掛け、死を選んだのである。このような特異な思考…死を以って恩に報いる…は他の作品でもそう見られる事ではなく、日本人的なこのキャラクターは徐少強ゆえだ、と筆者は信じる。

 今回の徐少強は襟足が長い、所謂宮本一郎系の髪型を少し短くしたもの。そしてこの作品では濡れ場も含めてやたらと彼のパンツ一丁姿が目に付く。其の中で一番どぎついのは、彼が殺す相手が警察の保護下にある為、警官に化けて進入するが、猜疑心の強いターゲットに服を脱げ!といわれて見せる白ブリーフ姿である。殺しの場面でもそんな姿でやられると、ここは笑うべきなのかどうなのか迷ってしまう位に白ブリーフが眩しい。

情報&資料提供:MEGUMIさん 多謝!

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