お気に入り蘇永康〔William So〕の歌曲

 蘇永康と言えば、最近になって歌手として売れるようになってきたが、嘗ては『俳優としては売れても歌手としては売れない』と呼ばれ続けてきたメガネの兄ちゃんである。こんな事を云われるのは大体、周潤發やトニー・レオンみたいな、本当に歌の下手な御仁(笑)につけられるべき名称なのだが、彼は歌が巧い。本当に巧い。ご多分に漏れず、私もつい一年位前まで彼が歌手としても活動している事など毛程も知らず(失礼)、彼の名と顔は壹號皇庭のレギュラーの一人としてしか認識していなかった。壹號皇庭と言うのは香港翡翠台の電視劇の一つで、欧陽震華(あまりお馴染みではなかろうが翡翠台の電視劇の多くに出・主演している気のいい中年叔父さん。新男達の挽歌(黄秋生が敵役・トニー出演)で周潤發に冗談をかます同僚の役で出ている)、「マダムキラー」の名を持つ陶大宇(この人も同じく翡翠台の番組に多く出演。日本で公開された香港作品でどれに出ているかは不明)、そして蘇永康の三人を主軸に、法廷闘争とそれに関わる三人の恋愛を描いたシリーズで、この番組に出た俳優・歌手でメジャーになった人は王菲、鄭秀文、そして蘇永康と多い。私はこの電視劇を割と毎回見ており、この番組が三十分ほどすると亜州電視に切り替えて徐少強・劉松仁主演の剣嘯江湖を見ていた。これら二つの番組は、片や香港の法廷闘争、片や古装片と日本では映画以外にお目に掛かる機会が先ず無い話題を取り扱っていた為、私はどちらを見るかで結構迷っていた覚えがある。蘇永康の演じていたキャラクターは彼のイメージにぴったりの真面目な青年で、彼女と結婚の約束をしてすぐ、其の彼女が強姦されるという悲劇に見まわれ、思いっきり取り乱す所を好演していた。演技も出来て歌も巧い彼がメジャー化し、彼の露出が上がったのは有難いが、どうせメジャー化するならもう一段上に上がって欲しいと思うこの頃である。なんか中途半端な感じがして仕方が無い。(大きなお世話
 彼はインタビューの中で、嘗てはカラオケで日本語の歌を歌っていたと語っており、そもそも芸能界入りする切っ掛けになったのも日本語の歌らしいので、一度は日本語の歌を出したいとの事。是非出していただきたいものだ。

粤語

『從来未發生』4:04

 彼は根本的に香港の歌手なので、発表する歌曲も当然粤語のものが殆どで、この歌も其の内の一つである。彼の声域の広さを感じさせるバラードで、切なげな声が曲に合っている。歌詞の内容は嘗てはあんなに愛し合っていたと言うのに、最早愛情は枯れ果て、自分の中に失恋の為に出来た今迄に無い大きな傷痕が出来た事を嘆くというもの。サビの所、『やはり起こってしまった あの時心の奥底に刻み込まれた愛は全て消え去ってしまった 君は多分信じやしないだろう 知りもしないだろう この傷痕がどれほどの間残るだろうことを』の辺りが悲しげで良い。この歌も壹號皇庭の挿入歌の一つである。

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