1979年の作品で亞洲時代の彼の代表作である。筆者が所持しているのは香港正版・三箱全60話である。流石にこの当時の作品に字幕なんぞ期待する方がいけないのか、見事に広東語のみ字幕なし。82年の同名映画(英題はBastardSwordsman)の元と思われるが、筆者はこの映画を見ていない為詳しい事は不明。後に義弟とも目される尹天照がリメイク作で主演を演じたが、オリジナルには及ばなかったようである。いじめられて弱音を吐く若き日の徐少強に魅力を感じた人間が当時多かった…のか?
物語開始時から雲飛揚がイジメの対象になっているのは、今まで見てきた彼のイメージからすると非常に新鮮である。ヘタレで夢見るナイーブな若者を徐少強が演じている、それだけで見るべきものがあるといっても良いかもしれない。昼間は飯のお膳は奪われるわ、武当派の兄弟子らに飛刀の的にされるわ(人型の板を抱えて逃げ回るというもの)と命に関わるイジメを受ける彼だが、夜中には謎の黒覆面の人物から剣を教えて貰うという二重生活(勿論その夜中の修行は秘密である)の中で、いじめに耐えかねて「もう嫌だ!」と覆面男に泣き付いたり、倫婉兒に「頼りないわねえ」と云われる傍からカッコ良くなった自分が彼女を助ける場面を想像してウットリしたりするのである。今回見た分は物語的に彼に重点を置いたものではないのだが、最初はある程度の背景説明に費やされるのは仕方の無い事だろう。とは言え、主役なのに第二話は出て来ないというのは如何なものだろうか。クレジットでもトップじゃないし、これだけ見ていると主役は傅玉書のようにも思えてくる。雲飛揚の逆襲は何時から始まるのか、気になるところである。他に気付いた点としては、ヒロインが「沈勝衣」時よりも美人なのが多い事と、千面佛なる未登場キャラを演じているのが高雄である事。おっさんまたここでも一緒か…と思ったが、別人だった。
いやぁ苗可秀は美人だわ…と言うのが素直な感想。キャラクター的にも蒼松の元恋人の娘と言う設定があって、説明読んだ限りはメインヒロインになるようだし、今後飛揚とどう絡むのか期待。今回の飛揚苛めは第四話のラブレター朗読の件である。飛揚に対する友情&どうやら誤字脱字が多いせいで、詰まり詰まりラブレターを読む玉書と周りで大爆笑する兄弟子達、そしてそれを叱責した上で更に続きを読ませようとする師叔(ジジィ)、決して表に出してはならぬものを公表されて形容できない心情の飛揚…何かここは小学校か?と思えてくる。とてもではないがいい大人がやる事ではない。飛揚は表向き武芸がさっぱりという設定なのだが、それだけでここまでやるかい?既に筆者は飛揚に感情移入しまくりであるなぁ。
さて、今回の最大の笑いどころは七剣陣を敷いた武当派の高弟七人対公孫弘&鳳コンビの戦いである。確かに場面場面は良く出来ている。当然殺陣も良い。…だが、しかし。一昼夜戦い続けると言うのは如何なものか(見物人含む)。これでは笑ってくれと言うようなものである。あと、管中流という、如何にも思わせぶりなキャラクターの存在そのものが笑えると言えば笑える。初登場時に、酒場にて、他人が触ったものを決して触ろうとせず、自ら用意した銀食器を使用するなど、異常なまでの潔癖ぶりを見せておきながら、酒場女にまんまと一杯食わされたりする間抜けさを持ちながら、自分の責任を巧く回避する狡猾さと自分に恥をかかせた人間にはまるきり容赦しない残忍酷薄さを持ち、瞬時に無敵門下生を惨殺する腕を持ち合わせながら、真の実力を出した飛揚にあっさり負けるなど、何だか非常に中途半端なキャラクターである。結局殺されなかったが、再登場の可能性はあるのだろうか…
公孫弘らを助けた後で、捜索に来た婉兒達の目を欺くべく飛揚が取り敢えず傍の水辺にぷっかりと土座衛門浮きして気絶した振りをするのだが、何か子供じみていて笑える。これは婉兒を心配させて気を惹こうとする彼の作戦だったのだが、この時も玉書が真っ先に動いて彼を介抱した為に結局玉書の婉兒へのアピールを更に高めるだけになってしまい、結局彼のやる事なす事は、表では何の役にも立っていないというのが更に笑える。彼が覆面をして公孫弘らを救ったのも元はと言えば、師匠(青松ではなく夜の稽古を見てくれる黒衣の男)に七剣陣を破る良い機会だと言われたからなのにタイミングを逸したせいだし、冷静に考えると何かやりきれないものがある。
それ以外で目を引くのは玉書の野望成就への歩みだろうか。兎に角彼は切れる男である。彼は飛揚が「出来る」事を見抜いた最初の人間であり、後に障害になるかも知れぬ彼の情報を独自に調査させて(まだ部下居るじゃん)、飛揚がどうやら青松の隠し子らしい事まで調べ上げたし、天蚕拳を会得する為には自分の妻をも手に掛ける決意を固めるナイス悪党でもある。で、ここで度々語られる天蚕拳とは、今のところ武当派総帥にのみ伝えられるすごい拳法であると言う事しか判らない。しかも、青松は天蚕拳を会得していないのである。この天蚕拳の秘密をめぐってどう物語が進行するのか楽しみである。柳生武芸帖みたいな展開を期待する。
今回鍵になるのは、武当山の総帥は妻帯を禁じられていると言う事である。これこそが青松をして飛揚を弟子に取らず、それで居て技を伝授した理由だった。飛揚は青松の実の息子であり、武当派総帥としての青松の存在を根底から揺るがすものだった…この分だと母親は無敵門の妻・沈曼君(梁淑荘)だろうか。配役でも別人を使っていたのでてっきり黒衣人と青松は別人かと思っていたのだが…なかなかやってくれる。で、飛揚が武当山から命からがら逃げ出して江湖に身を置く事になるのが今回見た分なのだが、飛揚の命を何故か狙う無敵門の毒使いの存在が良く判らない(勿論演出上も。武侠小説では度々この手の超絶暗殺者が出て来るが画像化すると怪しいにも程がある)。飛揚はその立場上、別段武当派にとっては重要人物でもなんでもない(青松にとっては違うが)、一介の青年である。それを何故に狙うのか…今後の話の中でそれはおいおい判るかもしれないが、時々連続ドラマは当初の設定を忘れてぶち壊す事態が発生するので油断は出来ない。この番組が放映されていた1979年当時はビデオチェックなどと言うものが一般には出回っていないし、且つ亞洲の香港テレビにおける位置付けを鑑みると受けを取る為に適当に演出を変えた可能性が否定できないのである(劍嘯江湖あたりはどうもそれくさい)。
他の見所はやはり玉書が物凄い勢いで総帥まで上り詰めた件だろうか(第十二話)。愛する?女性を振り切って、『武当派は僕を必要としているんだ…判ってくれ、婉兒』などと言いつつすぱっと彼女と手を切って…ないが…総帥の座にまんまと納まってしまった。武当派は人材不足であると断言出来てしまう問題ある演出であろう。玉書が来てどれだけの日数が経ったのか定かではないが、よく他の人間も納得するものである。尤も、甘い汁に預かろうと姑息に尻尾を振る赤松らも問題があるが…で、天蚕拳はどうなった?今回全く触れられていないぞおい。
今回物語の展開上、飛揚本人がそう目立つ活躍をしたようには思えなかった。中流との試合くらいであとは引っ繰り返っていたせいだろう。今回なんだかんだで目立っていたのは獨孤無敵である。内功の修行の最中に彼の脳裏に現れた、青松と妻が逢引して自分を嘲る幻に耐えられず修行を中断し逆上し娘に八つ当たりする(その直後娘は家出)のは何か見ていて痛々しい。この無敵を演じているのは『精武門』の武田氏その人なのだが、当時の彼はすらりとしていて切れ長の眼差しのクールガイである。基本的に武田氏と性格が似ていて、普段は物静かだが腹の中にストレスを貯めまくってしまいに爆発するあたりも同じである。あと、鳳に妹弟子に対して以上の心情を抱く公孫弘も何か切なくてよい。彼は『精武門』の蔡金虎とは役柄が違って、強いけれどもナイーブな人物を演じている。武当派七星陣を破ろうと鳳と共に励むものの、鳳が修行を投げ出してしまい右往左往する様も可愛らしい。今の劉錫賢みたいなものか。それにしても、飛揚が逃走の途中でそうと知らず出遭った寒潭の娘・傅香君(余安安)にも惚れられるし、飛揚のモテモテ振りには羨望の念を禁じえない。徐少強、本当にこの頃は青年スターだったんだな、としみじみ思う。
今回、無敵が逆上して武林の人間を完全に敵に廻す件が語られている。中流の師匠も、しょうもない幻を見せて無敵を煽りさえしなければ良かったものを。普通の人間ならば兎も角、相手は武田氏と同じキャラクター設定の無敵である。ぶち切れるのは自明の理だったのに…人を見る目が無かったとしか思えん。まあ、腐った性格の管中流を弟子に取った時点で推して知る可と云ったところか。で、その管中流が師匠の死に怒りを爆発させて復讐を誓うそばから無敵門の人間に次々に戦力を減らされるあたりもなかなかに深いものがある。中流には琴持と剣持の二人の小姓が付いていた(多分色小姓だろうと推察される)が、そのうち剣持が殺されて彼が師匠が殺害された以上に悲しんでいる(人一倍潔癖な彼が死体を担いでウロウロする事からもそれが判る)のが何とも云えない物がある。それにしても、この手の中国時代物に出てくる貴公子然とした輩には全く生活観が感じられない。日本のそれと比較しても尚奇妙に見えるのだから凄いとしか言いようが無い。とてもじゃないが長旅にそれは無いだろ…
で、飛揚はそんな馬鹿中流を例によってしばき倒す役柄である。どうも彼にだけはやたらと強いような印象を受けるのは気のせいだろうか。今回、玉書の暗黒面がついに婉兒の知るところとなってしまったがそれがどのように動くのかは判らない。彼の悪を知りつつやはり惚れた弱みで付いて行くのか、それとも一気に憎悪に転じるのか…今後の展開が気になる部分である。…天蚕拳はどうした?
今回の飛揚の受けた仕打ちは半ば自業自得の感が否めなくも無い。状況だけを抜き出してみると、身分を偽って自分の門派の大敵の娘を救って信用を得て、更に自分の実力も隠してそこに潜り込む…誰が見ても一人前のスパイ行為なのは一目瞭然である。何せ、本編中で既に玉書が同様の計略を実行して武当派をまんまと乗っ取ってしまったのであるからもうどうしようもない。結局玉書と違って組織の後押しが無かったのと、しなくても良い行動をつい過去からの経験で選んでしまった飛揚が愚かだったというべきだろう。それにしても公孫弘、厳つい面の癖に人間が小さいなあ。無敵門下にもまともな人間は居なくも無いが、上層部がこんなのばかりだとやはり組織は纏まるまい。前の話で無敵に敵を作るなと諭して殺された坊主が居たが、結局その通りの落ちが待っているパターンだなこれは。
今回笑えたのは、所謂祈祷師が呂家(飛揚が次に転がり込んだ家。そこの娘がどうも発狂しているようだ)で悪魔払いをかまそうとするものの、その発狂したが故の娘の哄笑に耐えられなくなって一斉に尻に帆掛けて逃げ出すあたりか。少しはエクソシストの神父を見習えよ…
相変わらず正体隠しに汲々としながらも直ぐに正体が露呈する飛揚。同じ事ならば隠さんでも良いのにと突っ込み入れずには居られない。しかも今回に至っては一切の反抗も出来ずにやられ放題である。これはこれで面白いのだが…。で、無敵門に引っ立てられて鳳と再会するのだが、縛られて「チキショウ無敵門め、体が完全ならば全員叩き殺してくれる!」と喚いた傍から「やって御覧なさいな」と鳳が出てきて狼狽する件が何となく笑える。今回鳳は実に漢らしく、惚れた男の妻になるかも知れぬ女性(尤もこの物語にしては飛揚に惚れていない)の為に色々援助してしまう。この時、仏頂面を崩さないのも彼女らしくて良い。
今回の最大の笑いどころは、無敵門下の人間が徒党を組んで移動する場面で水戸黄門の劇中音楽が掛かる事である。悪代官御一行にしか見えない(そう考えながら見ていると一行の構成員がいつもの悪人に見えてくる…)よ、無敵門。
今回の『何でやねん!』は、氷山雪蓮を巡る攻防において、飛揚が花を食わされる場面がその一、その二が体温低下の演出である。そもそもこのドラマはさらりととんでもない演出をしてしまう(そこが一つの魅力でもあるのだが)のが当たり前であるが…まず、飛揚が花を食わされるところで、何故に無理やり口に押し込められにゃいかんのだ。その花は傅香君に渡すものだった筈なんだが…幾ら物語上飛揚の復活を加速させるものとは言え無理があり過ぎる。もう一つは彼の低下した体温を暖めるべく出した白湯を一瞬にして凍らせる演出…お前は何者だ?最早大爆笑である。金庸の小説で同様の描写は時々出てくるが流石にそれは如何だろう。その他にも今回見た分は力技が多かった。
後は、あのナルシス管中流が回族の女性・依貝莎(蔡(王京)輝)に惚れた事+野心で、回族の武術の使い手・黒摩勒(麦天恩)と白摩勒(金山)に弟子入りを願った挙句イビリ倒された挙句死に掛ける件だろうか。このキャラクターが今までやって来た所業を鑑みると因果応報の四文字が頭の中を駆け巡る…
漸く?飛揚が本来の力を取り戻し、更に力を得た。これで彼が主役のアクションシーンが増えると言うものである。今回分で天蚕拳の要訣が漸くにして玉書に解読され、後に飛揚がそれを得る為の布石となると予想され、今後の展開がテンポ良くなる事が期待される。父親の形見のへんてこ針金仮面で顔を隠し何処にでも現れる飛揚(結局中流、依貝莎の二人を白黒雙魔から助けたのも彼である…ひょっとして物凄く狭い地域で展開されているのか?)だが、その正体がレギュラー陣の人達には全てばればれなのは如何なものか。尤もあの声と背丈、長髪で判らない人間も居なかろうて。青松も何を形見にしてるんだか。
で、飛揚とは別に笑い担当だったのが中流。海底神龍の所に転がり込んだものの、白黒雙魔の秘伝書をパクった挙句、二人の弟子と駆け落ちしたなど云える訳も無く適当に誤魔化していたら二人はやってくるし、散々である(この辺からも物語が武当山近所だけで展開されているらしい事が垣間見る事が出来る)。
それにしても、飛揚と関る女性ってのは皆彼と対立する側の人間しか出てこないのは何故だろうか。傅香君は父殺しの仇の妹だし、鳳は父の大敵の娘だし(下手をすると実の妹…)、婉兒は勝手に敵視するし…狙ってるとは言え、まさにこれでもか状態だ…
扶桑って日本の事を指しているのだけれど…。一応忍者か剣術者でも出てこないかと希望するのだが、日本編があるかどうか殆ど期待できないのが残念である。程小東がアクション担当している話が割とあるので全くゼロとは云えないのだが…で、三十三話には主人公が全く出て来なかった。この話で海底神龍は峨嵋派乗っ取りを企てた管中流を討とうとしてほんの一瞬見せた情が仇となり殺害され、峨嵋派総帥の座を得た中流は自分達と同様打倒・無敵門を掲げる武当派に近付き、極悪タッグを組んでしまうので、飛揚にとっては恐らく面倒極まりない状態になってしまった。鳳と傅香君はそれぞれ父に逆らった為に同門から追われる身となるし(鳳に至っては公孫弘との結婚話から逃げた結果、殺害命令すら出る始末。どっちに転んでも公孫弘は…哀れ)、事態の収拾は死人が出ない限り無理そうだ。よくこんなドロドロの話作ったな。
傅香君と鳳が出会った事で、飛揚の『程々に楽しくお付き合い』作戦?は完全に破綻を来してしまった。そりゃ彼は決定的な「好きだ」と言う言葉は発していなかったが、今迄の彼の取った八方美人そのものの態度がこの事態を生んだのは間違いない。それどころか、飛揚は鳳の事を好きだから助けに行くと傅香君の目前できっぱり云ってしまったせいで彼女は放心状態で行動不能になるし、鳳と飛揚が腹違いの兄妹である事もほぼ確定してしまい、バッドエンドも見えてしまった(飛揚本人は未知)。獨孤無敵の強さは大ボスとしての役割柄更に強化されてどれほど強いのかさっぱり判らなくなって、白黒雙魔を手玉に取った飛揚Ver.2すら相手にならない(尤も飛揚も一撃で廃人化しない程度には打たれ強くなったようだが)程である。玉書や中流が手勢を率いて押掛けたとしてもこの分じゃ全く問題なさげな様相を呈している。
それにしても、鳳の命を救う為に己が身に剣を付き立てた公孫弘程の漢が、父との賭けで態と顔に傷を付けた鳳の恫喝『これでも私を愛せるの!』にびびって何の声も掛けられずに、彼女を賭けに勝たせてしまうのは如何なものか。幾ら何でも顔に三本傷が付いただけでそこまで引くか?折角35話で漢を上げたのに台無しだよ…
玉書の見事すぎるタイミングでの裏切り行為には思わず笑ってしまう。中流も似たような事やってるんだから少しは気付いても良さそうなもんだが…今回見直したのは、武当派の中で玉書に煽てられて最初に彼についた青松の弟弟子二人のうち、赤松が最後に漢気を出して「武当の掟に背く事、自刃あるのみ!」と自殺した事か。蒼松がとっとと恭順の意を示したのに対して、彼はあくまでも武当派の為と信じて動いていたと言うのは中々見せてくれた。それにしても鳳の家出と夫人の脱出劇がこのような形で関りを持つとは正直思わなかった。物凄いご都合主義の発露ではある。で、主人公・飛揚は又半死人状態で転がったままで、結局まともに言葉すら話していなかった。本当に主人公か?飛揚よ。今回はどちらかと言うと中流に重点を置いて物語が進んでいた。寒潭配下に殺されそうになった貝莎を救う為、颯爽と…は云い難いぼろぼろの姿で現れ、風雷雨電の四人衆を相手に戦う彼は今迄で最もカッコ良い。額には玉書に付けられた斜め一閃の剣傷が大きく付けられ、渋さも倍増。このまま彼は善人として動いてくれれば良いと思うけれど…どうかなあ。
なななな何だこれは?と言うのが今回分の感想。墓を爆破して沖天は復活(荼毘に付されてたらと思うと洒落にもならんが道教だしな)、飛揚も繭を爆破して復活…何かを破壊しなければならんとは実に迷惑な技だ。何よりも問題なのは徐少強でなくなってしまった事が一番痛い。ついでに言えば、飛揚が十台(前半?)の子供になった事を知らぬ傅香君と鳳の二人がこの事実を知ればどうなるか…あんまり考えたくない展開がつい頭に浮かんでしまう。それにしても鳳は何時まで顔を隠し続けるのだろうか。顔隠した状態で金環から子供の世話まで言い付かった為にもう今更引っ込みが付かなくなってしまったんだろうか。今回、玉書が武当派の秘拳を身に付けながらも沖天にぼろ負けした所を見ると、やはり武当派の技は内功の強さに比例して強くなるのだなあと納得してしまったが、彼の強さも海底神龍と同じくらい好い加減なのであと二十話近く生き残るか怪しいものである。それから、ちょっと男前になった中流だが、やられメークを落としていつもの服に戻った(何故か額の傷までなくなった)途端に元の酷い奴に戻ってしまった。…可哀相な伊貝莎。
ああ、もう徐少強as雲飛揚を見る事は叶わないのか。後十数話もあると言うのに…。こんな話になるとは聞いてねーぞど畜生め。こうなると親しみのもてる公孫弘や無敵を目当てに見るしかないような気がしてきた。この若返った飛揚はとてつもなく強いんだけれど、頭の中身も小僧化してしまったようで鳳に「何故居なくなったんだ!?」って…しまった、あんまり中身は変わってなかったかも知れない。あの台詞を吐いた時点で飛揚が八方美人だと言う事が再確認されてしまった。この後当然の如く鳳は怒るのだがそれはご尤もとしか言いようがない。公孫弘が致命的なボケをかまさなければまだ救いはあったのに…45話の時点で、獨孤夫人が鳳との御付き合いの事を傅香君に聞かされた上に彼が青松の子である事を知り愕然とするベタな展開があったので、もうご破算は確定である。同腹の兄妹が結婚するなんて以ての外、当事者二人が傷付くのは勿論だが、その周囲の人間特に公孫弘はやりきれまい。今回公孫弘はあのボケが唯単に気が動転しただけだった事が発覚したのだが(この時の飛揚とのやり取り「お前はあの顔の彼女を娶るのか?」「俺が好きなのは彼女の人となりであって顔じゃない。あんたは彼女の顔が好きだったのか?」「いや…」が泣かせる)、それだけに余計に哀れである。
そろそろ物語の〆に向かって登場人物の整理に動き出したな、と言うのが素直な感想である。ここ数話で寒潭一派は玉書(と傅香君)を除き全滅、無敵門は獨孤家族除いて壊滅、白黒双魔も48話にて玉書の手に掛かり死亡…やれやれ。中流はこちらの期待通りに良く判らん強さのまま世の中渡ってるのが面白い。き奴はは方便を使いながら玄陰公主を篭絡する事に成功してなにやら怪しげな関係になってるし、黒白の二人を言葉巧みに煽って公主暗殺計画を目論ませておきながら、それを潰して公主の誅戮許可を貰って嬉々として殺しに掛かるし…白黒の二人って物語を通じて全く良い事なかったな。救いは伊貝莎が何だかんだ云っても師匠思いで墓建てた事くらいである。中流が成り上がって行けば行く程、その嫁である伊貝莎の立場がどんどんなくなっていくのは見ていて悲しい。本作で出てくる女性でまともに幸せな女性は一人も居ない。最終話で主要登場人物のうち何人がハッピーエンドになるのかさっぱり判らない。結局皆不幸と言うパターンも予想出来なくも無いのだが、幾ら何でもそれは酷いなと思いつつ、残りの話に期待せねばなるまい。徐少強の出番があるのかどうかも気になるところである。それにしても今回、玄陰公主等の住んでる所が中々笑かしてくれた。白亜の聖堂の屋根に燦然と輝く十字架…そいつはどう見てもキリスト教の教会だぞおい。幾ら何でもそれはないだろ。
ついに沖天死亡に続き、伊貝莎迄が死亡してしまった(あと無敵門お抱えの医者も)。これで残るレギュラーはもうここ数話姿を見ていない飛揚に鳳、傅香君、玉書、子母金環の息子の陸丹、獨孤無敵と中流、玄陰公主それに武当派十把一柄げの皆さんだけとなってしまった。幾ら何でもここ数話の展開は酷い。殺し過ぎである。特に伊貝莎の死に方は余りにも悲しい。夫・中流が玄陰公主とのっぴきならない関係にまで発展した事を知った彼女は毒薬を酒に混ぜて無理心中を図ったものの、既に玄陰公主から解毒薬を渡されていた中流は死んだ振りで彼女だけあの世行き…救われない。この直後、玄陰公主が「私らの秘密を伊貝莎に知られる訳には行かない」と洩らすと「死人が秘密を知る事はありませんよ」と冷たく笑う中流のシーンがあり、判ってはいるものの慄然とさせられる。玉書を超えるド外道振りをこれでもかと見せ付けてくれる。今回他に強烈だったのは、鳳がまだ先の戦いの傷が完治し切っていない無敵の所に殴りこんだ時に「殺したいのならば殺しなさい。だが私も人だ。ああせずには居られなかった云々」と言っておきながら、情に負けて去った鳳の姿が見えなくなった事を確認すると「儂に人の心などあるものか」とにやりとするシーン。こんなのばっかりだ、このドラマ。
今迄婉兒の消息が判らんなーと思っていたら、このような形になってしまった。玉書は54話ですぐに立ち直ってしまうが、そうした無情さが余計に赤子と婉兒を哀れなものにしている。どうもこのドラマでは悪役に恋した女性は碌な死に方をしない様である。飛揚の母親もあの近親結婚騒ぎの際に自殺してしまったし。今回分で玉書らとは別に、功力が回復した無敵が再び無敵門を立ち上げようと行動を開始する件が語られるが、この時無敵門が潰れた結果嘗ての彼の知人が掌を返したように彼を完全に乞食扱いし、終いには野良仕事する連中の昼飯を失敬してがっつく嵌めに陥る無敵が笑える。社会的立場は無くなっても彼の恐るべき功力は失われていないのだから、乞食扱いと言うわけにもいかんだろうに…殺されるやも知れないというのに。結局チンピラの命を気まぐれで救ってやった事から「兄貴!付いて行きます!」と自ら手下になる事を申し出られた無敵は再び失っていた自信を取り戻し、元の性格に戻った…と思っていたのだが何だか人間が丸くなっていた。彼の新たなる手下であるチンピラは口だけで世の中を渡ってきただけの、どうしようもなく使えない人間ばかりなのだが(嘗ての彼なら一撃の下に殺害している筈なのに)ワンチャンス与えて殺さなかったり、盆栽の手入れをしたり…何だか別人のようだ。
現在のところ如何なる腹積もりで玄陰公主の傍で側近として獨孤無敵が振舞うのはサッパリ判らない。本作品においては(筆者の広東語聞き取り能力の問題もあるが)唐突にキャラクターが消えたり出たりしてその物語の伏線が後から語られるというパターンが良く出てくるが、これもそうしたものの一つなのだろう。で、今回粘るなーと思ったのが中流。獨孤無敵の出現により焦った彼が余りの恐怖からやけを起こして玄陰公主を殺害しようとしたものの、却って覆面無敵に信頼を寄せる結果となり、ほうほうの体で逃げ出したにも拘らず、直ぐに鳳を手篭めにしようと動く彼の無節操さとふてぶてしさには恐れ入る。全く以て自分が悪いとかそう云う惰弱な思考に行かない(行くと玉書と被るからだと思うが)のは悪役として非常に強烈で良い。この物語には掬いようの無い悪党が三人(無敵・玉書・中流)出て来るがそれぞれが方向性が違うと言うのが面白い。他に特筆すべき点は別に無く、こちらとしては後残す三話で徐少強の再登場を願うのみ。
コメントは一つ。徐少強はついに帰ってきませんでした。