老虎出更〜Tiger on beat〜

領銜主演 周潤發 利智 コナン・リー 徐少強 姜大偉 他

 1988年製作の周潤發主演の警察もの。女たらしでセコイ12年昇進無しの刑事(周潤發)と新人刑事のコナン・リーがコンビを組んで徐少強率いる国際麻薬密売組織を叩くというもの。この作品の見所としては周潤發演ずる刑事のスカタン振りと女(利智)にも容赦しない其の尋問の苛烈さ(『名剣』における徐少強の鬼畜さを遥かに上回る。殴る蹴る、洗剤を顔面に振りかけ口の中にまで突っ込む!しかもスタントなし)、クライマックスにおけるコナン・リーのチェーンソーチャンバラがあるが、このサイトは徐少強のファンページなのであくまでも彼の役を追う事にする。この映画の中で徐少強は知的で非情ではあるが何処かコミカルな組織のボス・ローをを演じている。普段彼は伊達?メガネを着用しているのだが、これが思いの他、似合っている。今まで私が見てきた徐少強の演じたキャラクターの中で一番ソフトな印象を与えている。彼は組織の裏切り者、ピンを追って其の妹・ドナを拉致せんとするのだが、この辺りの演出が真面目な筈なのに笑えてくる。彼はドナが引っ張られてきた時、其の部屋で髭を剃って貰っている。この時、彼の顔は白布で覆われて見えない。ローはゆっくりと白布を取り除きドナを見据え、彼女をしばき倒すと白布を被せてシェービング・クリームを彼女の首にぐちゃぐちゃと塗りたくる。そして髭剃り様の剃刀を彼女の喉に当ててから白布を取り除き、『この香港であこぎな商売は良くないな』と自分の事は完全に棚上げして因果を含めながらゆっくりと彼女の首についたクリームを剃刀で削ぎ落としてゆく。この辺り、結構サド入ってて笑いを誘う。そこにコナン・リー演ずるマイケル刑事が乱入してくる訳であるが、彼らの隠れている所は元々女子更衣室で、そこの女子トイレで乱闘しマイケルをやっつけた(殺してはいない。ローはわざわざ『殺すなよ!』と命令している)後、堂々と周潤發の前を通りすぎる。勿論、女子トイレから出て、である。周潤發は『オイ、其処は女子トイレだぞ』と怒鳴るが、ローは人間が出来ている為か大真面目な顔で『知っている』と告げてさっさと出てゆく。其の余りに自然な態度に周潤發もなにも云えずそのまま彼と其の手下を見逃してしまう。さすが大物だ。ローは其の時に入手したドナの鞄からピンの連絡先を発見、彼に電話連絡をいれる。ピンが出るとすぐに彼は『お前なに隠れてんだ』と詰問するが、其の時点でロー達は既にピンの隠れ家に到着しており、ピンが時間稼ぎに『後で連絡入れますから』と電話を切った瞬間に其のすぐ傍で『おい、切るんじゃあない』と凄む。一々回りくどい所がこのキャラクターの特徴の様である。相手をじわじわといたぶる、蛇の様なキャラクターだ。彼は丁度掛かってきた妹からの電話をピンに受けさせ、彼女を呼び出して金を取り戻そうとしたがピンのぎりぎりの反抗でそれは阻止されてしまう。ローはそれに怒り(それでも徐少強スマイルを絶やさない所が彼らしい)、部下に命じてピンの手に大型花火を握らせてテープで縛り、火を付ける。『お前に花火をプレゼントしてやる』にこにこ笑いながらこう云う事をするから徐少強は怖い。結局そんなやりたい放題も外人(白人)との麻薬の取引を嗅ぎ付けた周潤發達に阻まれ、彼は割りとあっけなく捉まってしまう。其の後、ローの腹心の部下の一人が警察の網をかいくぐり、周潤發の妹を人質に取り(この時ドナ(利智)は撃たれて死亡)、ローとの交換を要求する。ローは警察病院で優雅な?入院生活をしていた(ベッドで雑誌を読んでいる所が妙に子供っぽい)が其処に周潤發達がやってきて取引に連れ出される。そこから彼の真の受難が開始される。取引が始まった瞬間から、彼は周潤發ら二人の手で車のボンネットに両腕を手錠で固定され、動けなくされてしまうのだ。そして、動けない彼がいるその場で銃撃戦。彼は其処から後、全く良い所なし。部下の献身的な助けで彼は手錠から脱出、周潤發が投げ付けた柳葉刀でさあて反撃開始、と思ったらまたあっさりとやられて捉まってしまう。部下は全滅し、彼は其の全てを目にしてがっくりと項垂れる。でもボス、あんた死んでねーじゃん。徐少強が悪役で且つ、五体満足で生きたままエンディングを迎えるのは非常に珍しい(と共に何か拍子抜けた。)。やはりクライマックスはコナンのチャンバラではなく、徐少強のチャンバラが見たかった、と思うのは私だけだろうか。

 

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