『THE UNDERDARK CRAWLER』

或いは

『闇仙子シェリンの受難の日々』

12.Escape

 ゲームをやっていて時折、引き際を考えず深入りした挙句ににっちもさっちも行かなくなってキャラクターが死亡…というのは時折見受けられる事である。今回は、引き際と逃避にについて。
 注意に注意を重ねて偵察や事前調査を行い、いざ冒険に出発したものの、実地ではこちらの予想を遥かに超えた展開が待ち受けている、そんな事は良くある事である。ImpやQuasitのようなSpecial Familiarの行使するCommuneや、Divination、Contact other planeといった、色々な情報入手系統の呪文は敵への対処法も示唆してくれるし、またキャラクターの被る危険を事前に察知し冒険を中止する事も出来る。しかし、いざ実地に赴いてしまってから、予想外の展開でPCが重傷を負ったり、未知の強敵が現れた場合、問題に対して如何に立ち向かうか。最も簡単なのは『逃げる』事である。
 逃げる為の方策で最も多用されるのが『逃走』つまり走って逃げる事である。逃げる場合は相手の能力にも注意を払わなくてはいけない。遭遇して戦闘と言う時に、相手の移動速度がこちらよりも数段上の場合は、まず逃げ切れないと考えた方が良い。また、戦闘時にはこちらの顔が判らぬ様にヘルメットなどを着用して、素顔を見られる事も出来る限り避けたい。万が一敵又はこちらが逃亡した場合、相手も自分達を調査できると言う事を肝に銘じておかなくてはならない。それどころか、相手が空間を超えて攻撃し得る手段を持ち合わせていた場合、今度は自分が的に掛けらる恐怖に慄かねばならなくなる。よって一度戦った相手は殲滅するか懐柔するか、兎に角決着は付けておいた方が良い。でなければ、撤退⇒問題解決⇒即反撃するしか未来はない。
 逃避行動にはこうした問題点が常在しているので、敵の追跡を躱す為に探知系呪文を妨害する魔法の助けを借りる事は気に留めておくべきである。勿論、相手にそれだけの能力がない事が予め判っている場合はその限りではない。
 地下洞穴の中で逃走を試みる場合、更に幾つかの問題がある。直に思い付くのは視界が狭い事による新たな危険の見落とし、落盤の危険、転倒の危険、遭遇確率の増加といったものだろう。こう云ったものから逃走の妨害を受けない様に、高いレベルの魔法使いならばとっととTeleport without errorあたりでその場から文字通り消え去るのが当たり前と思われなくもない。
 が、実際、地上にTeleportで戻るというオプションはない。GDQモジュールの地下世界での法則において、『最初のエンカウンター以後、1/2マイルを越える距離へのTeleportationは不可能である』と書かれてあり、且つこのモジュールがUAまで対応している事から、超能力を含むTeleport及びTeleport without errorは阻害される事になる。この地下においてのTeleportation妨害効果に関してのルールは割と便利(PCにとっては?)なので私はどこであれ地下に進んで5マイルを越えた時点でTeleportationは不可としている。確かにその辺の呪文を使用すれば一時は逃げられるだろう。しかし、果たしてそこから先、生き延びられるか。非常に分の悪い賭けをする事に他ならない。よって、彼らは只管己の足で逃げる事になったのである。(尤も、Ethereal planeに逃げ込む手段もなくはないが、それはまた、別の話である)

13.Food Gathering in Underdark

 WSGのP.50〜60には水・食料調達の方法が記されている。これらは屋外冒険において僧侶を仲間に持たぬPC達(僧侶のLVが低過ぎる場合は論外)が止むを得ない状態になった場合使用されるルールであるが、地下世界においてこの手の物資調達を行うルールは基本的には存在していない。
 では、地下世界で食糧難になった場合、どうするべきなのか。一番簡単な方法は、敵を殺して食べる事である。全身が毒や病原菌の塊のようなモンスターでない限り、食料として何とかなるものである。その理由の一つが、植物に関しては食物が不適切である可能性を示唆するルールは存在しているが動物に関しては特に記されていない事が挙げられる。身も蓋もない云い方ではあるが、これは実に有難い。Shambler等の植物系怪物は怪しい物だが、動物形モンスターならばMindflayerだって食おうと思えば食えるのである。
 地下における生物との接近遭遇において、遭遇する生物のうち2割(GDQモジュール参照)は食っても異常無さそうな手合いである。これを有効利用しない手はない。基本的に食料調達する為のランダム要素が存在していない地下世界はForagingすら不可能であり、DMの設定如何で完全な不毛の洞窟にされる可能性が高い。特に水の確保に関しては、DMに『ない』と云われてしまえば其れまでなので、動物の体液を飲む事も考えられる。さて、そうやって食料を得たPC達には、DMが寄生虫なり病気の判定をさせる可能性も残っているので、調理方法にも気を配る必要があることも見逃せない。基本的には加熱処理を行い、寄生虫や病原菌の生存可能性を可能な限り減らす事が好ましい。更に意地悪なDMならば味で文句を言うかもしれないので、CantripでFlavorでも使って味を誤魔化せば取り敢えず問題は殆ど解消されると言っても良いだろう。寄生虫や病気の判定は第一版のDMGにしかないので第二版を使用している大抵の方ならばここまでやる事もないだろうが…。
 入手した水・食料は、Preserveの魔法やCantripのDry等で乾燥させるなりし余った分は保存する様努力しなければならない(腐敗の可能性がまともには設定されていないとはいえ)。並みのPCならば一週間は食い物無しで耐える事が出来る。しかし、水は三日前後で限界が来るので、その分の注意を払う事は食物の比ではない。カラムのキャラクターの場合は水だけは何とかなる状態ではあるのだが、それは特殊と言うべきであろう。
 何よりも大切なのは、このカラムのパーティのような状態になることだけは事前に避ける様行動すべきである。其れを忘れてはいけない。

14.Underground Water Travel(1)

 DSGのP.46-48、WSGのP.44-45には筏やボートといった船舶による移動に関するルールが存在している。DSGのルールだけでは、実際にその船舶がどれだけの搭載能力があるのか判らないので、この場合は両方を見比べて情報を補填する必要がある。少なくとも、人員物資が充分搭載可能な筏やボートがなければ話にならない。
 さて、筏の材料としてシェリンは巨大茸を使用する事を考えついた。地底に生える茸その物に関するルールが現在の所まともに存在した例はないが、DSGのP.89イラスト、P.81の描写などで散見される限りではその柄の長さが大きいもの出30フィートに及ぶ巨大茸が地下世界に割と存在しているらしく、其れだけのものならば充分材木としても活用できる事は想像に難くはない。茸の繊維を利用して船を組む事は充分可能であろう。この時、生木(生茸?)であるが為に強度が心配だと思われるならば、CantripのDryを使用して芯から乾燥させれば良い。魔法であるがために下手に自然乾燥させるよりも早くて効果的である。
 筏を組む事自体はそう難しい事ではない。それこそ、DMに時間を度外視して造らせて貰えば良いだけである。実際のプレイにおいては、より用意周到なパーティの場合、Dragon#273の忍者式組立てボートなり、DSGの各種ボートを縮小化ないしBag of Holdingに放り込んでこうした事態に臨む事になるだろう。

続く

戻る