『THE UNDERDARK CRAWLER』

或いは

『闇仙子シェリンの受難の日々』

8.Combat in Water

 今回は水中での戦いを強いられてしまった場合について書く事にする。完全に水中に没して戦う事はPCにとっては黒闇の中と同等か或いは更に辛い戦闘状況になる。今回の状況はWSGのp.85のルールと参照すると各キャラクターは、水が膝上から腰迄の状態で戦っているのだが、それだけでもDexによるACボーナスを失い、更に戦闘判定(命中と損害決定時)に-1のペナルティを受ける。水深が深くなれば当然そのペナルティも深刻なものと成らざるを得ない。今回パーティを襲撃したアンバーハルクは明らかに体が大きなお陰でこの程度の水深(約2フィート)では戦闘に悪影響は出ないと判断されている。
 なお、水中歩行速度(水泳速度ではない)に関しては色々あるがWSGルールでは今一つピンと来ないので、この際Combat & Tacticsのp.30の表を使用する方が判りやすいと思う。継接ぎルールが嫌いな人には勧められないが…
 水中での視界の制限に付いては、1997年発売のサプリメント『of Ships and the Sea(以後SSと表記)』68-72に詳しい。このルールは水中冒険の為の為のサバイバルガイドなので所持するに越した事はない。いや、購入すべきである。水温によって体温を奪われるルールはDSGのp.42やWSG等に掲載されているのでそれらも参考にしたい。凍傷のルールはAD&Dでも洒落にならないものの一つなので、このような状況にならないよう呪文や魔法の品物によって防御したい。
 加えて、このような状況下では水中に魔法を撃ち込む事にも注意を払わなければならない。第1版DMGですら、Lightning Boltの呪文が水中で20’半径に拡散する事などに付いては記述されている(シェリンが今回使用したのはこれ)が、SSでは更に嬉しい(厄介?)な事に、マテリアル・コンポーネントが水中で使用可能か否かもルールで規定されている。シェリンがLightning Boltの触媒の一つである毛皮の切れ端を濡れない様にしたのは、毛皮が濡れてしまった場合、対水ST判定で14以上を出す事を要求される(失敗すると触媒として用を成さなくなる)からである。

9.Fighting with an Aboleth in Water-filled Tunnel (1)

 前回筆者は水中での戦いについて触れたが、今回も其れを受けて話をする事にする。水中戦に秀でた敵と互角に戦うには、水中で自在に動ける事と呼吸を確保する事が必須である。水中で地上と同じく戦えるのならば大抵の戦闘でPCに軍配が上がるものと思われるが、その為に最も手軽でかつ強力な手段がRing of Free Actionの使用である(このパーティではアボットのみがこの有効な指輪を使用している)。
 実際のプレイ状況においては色々な事情が想定されるのだが、全員の力が極端に制限される非常時においては最も強いキャラクターがこうした魔法の品を行使する状況であるのが望ましい。何と云っても、生存率の上昇こそが冒険成功の鍵だからである。弱いキャラクターを守るのも結構だが、AD&Dでは強いキャラクターが更に強くなる事の方が色々な意味で危険度が少なく済む傾向があるので、いざと言う時には思い切りも必要である。全滅だけは避けなくてはならない。
 今回は水中で呪文を行使する事にも付いて述べて見ようと思う。前回では腰まで浸かった状態とは云え、本当の意味で水中で呪文を使用するとまではいかなかったが、水中で呪文を行使しようとするとSSのルールでは更に以下の制限が加えられている。
 Ring of Free actionはWater Breathingと組み合わせると、Vコンポーネントの使用制限も解消する事が出来る。水中冒険の前には是非入手しておきたいものである。

10.Encounter with Svirfneblin

 アンダーダークで比較的安全に冒険するには先ずランダムで発生する遭遇戦で確実に勝利できる戦力と、それらを維持する補給が不可欠である。それらについては以前にも述べてあるが、それと同じくらいに重要なのが、遭遇した相手と意思疎通出来る事である。幾等AD&Dがハックンスラッシュゲームであっても、一々出会う度に戦闘していてはキリがない。交渉できる時には交渉すべきである。今回はSvirfneblinとの出遭いを例にとってみよう。尚、今回使用させてもらったルールはオフィシャルのそれよりも比較的判り易いDragon#107号の"A new loyalty base"である。
 何故にシェリンが彼らから不妙い反応をされ、反対もまた然りなのか、それを分析して見よう。互いに顔馴染ではない彼らが出遭うとこうなる。この計算はd20の出目への修正である。
・種族修正-4
・性格倫理の違いにおける修正(彼らは他人から見てNGであっても本人はNである)-8
・姿の違いによる修正-1
・社会の違いによる修正-4
・彼のComlinessによる修正+6(最初の2-5rはComが適用され、それ以後CHR反応修正が適用される)
 以上の結果から彼へのSvirfneblinの反応修正は-11。百分率だと-55%である。DrowはSvirfneblinとの長年の敵対関係から、社会的にも種族的にも憎み合っているし、一般的にDrowへの性格の判断はCEとされる。シェリンの性格が実際違っているにも関わらず、反応者は一般的認識に基づいて判断を下す為この様な結果になる。と言う事は、反応判定をd20で振って、20を出してすらも否定的な反応しか返ってこないのである。これでは彼が信用されなくとも致し方がない。

 一方、ヘルベルト達人間への反応は…
・種族修正-1
・性格倫理の違いにおける修正(彼らは他人から見てNGであっても本人はNである)+1
・姿の違いによる修正-1
・社会の違いによる修正-1
・彼らのComlinessによる修正色々(最も低いアボットで修正なし、他は+3)
…合計-2〜+1と云うことである。これに加え、ヘルベルト達は小説の中ではっきりと語られてはいないが、冒険で得た財宝を賂として彼らに渡しており、その結果反応修正は更に良好なもの(+1)へと変わっている。
 シェリンのような闇仙子は地下で勢力を築いているものの、その底意地の悪い種属性だけに他人からの反応は良くない(だからと言って他だったら良いのかと言う話もあるが)。となると、シェリンは生き残りの為には賂を送って向こうのやり方に合わせ、少しでも向こうの機嫌を取るしか方策がない。補給源であるロザリアもおかしな事になっている以上、彼が自力で脱出する事が万に一つ出来たとしても、生きてエレルヘイに辿り着ける事はないだろう。結論から言うと、初見でDrowがSvirfneblinと折り合いを付ける事は不可能ではないが簡単な事では決してない。とっとと別種族の別メンバーにやってもらった方が得策である。彼らの不屈の精神はDrowをして『良い奴隷にはならぬ』と云わしめるほど頑健で、戦闘になってしまえば最早取り返しもつかない。

11.Fighting with an Aboleth in Water-filled Tunnel (2)

…と言う訳で(何がだ)、今回はAbolethについて。私の所では超能力のルールそのものに付いては第一版のそれ+Dragon78号の追加記述に基づいて判定しているので、情報的に古いものである事をお断りしておく。
 Abolethそのものについては、Dragon131号その他に載っているので大まかに述べるが、彼らは両生類の一種で暗青色の、太った魚のような外見をしており、基本的に地上を冒険する輩とは艶なき存在である。両生類と言うだけあって空気呼吸も可能であるが、水のある場所から離れる事もしない。よって往々にして基本的には彼らは水中か、水際でその存在を確認できる。Abolethについて最も知られている能力は他人の精神を支配する能力、生態組織の変質を引き起こす触手、そして接近戦時に彼らの出す、空気呼吸を阻害させるガス、この三つである。更にAbolethは個体能力として超能力Psionicを有しており、それぞれが何らかの形でその敵対者にとって不利に働く乃至自分にとって有利に働く諸能力を所持している。彼らは自分の手を汚す事よりも、他人を操作し奴隷とする事を好み、常にその周囲には奴隷と化した生物が常に控えている。
 Dragon131号の記事によると、Abolethが一度に操作可能な奴隷の数はそのHDに関わらず六体である(七体目が出来るとより強力なGreater又はNoble Abolethが来てそのどこにあるのかも分からない都市に持って行く為)。この生物は基本的に他人任せの生活を送るので戦闘や食料調達、情報入手などの煩わしい事は大体奴隷にやらせている。
 そんな訳で直接戦闘する機会は余り無いのが現実であるが、Abolethが新しく他人を奴隷化するにあたっては、必ず30フィート以内の間合いまで近づく必要がある為、この時に戦闘が発生する事が多々ある。シェリンが思い当たったのはまさにこれである。しかし、実際に戦闘するにしても、相手は大体の場合水中にいる為に水中戦を強要されるばかりか、奴隷の邪魔もあり決して簡単な事ではない。
 シェリンがネガティブな反応しか返さないのは、Abolethを相手にする事が自分にとって明らかに不利である事を肯定しているせいである。

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