その他チョイ役

新蜀山剣侠(邦題:蜀山奇伝 天空の剣)

 ツイハーク監督。ユンピョウ、林青霞、鄭少秋らが出演。この作品のチョイ役で劉松仁と徐少強が出演している。残念ながらこの二人の対決はこちらの期待?に反して全く無し。徐少強は天空山に住む仙人もどきの役。全身蓑というのか、チアガールの持つポンポンというのか、はたまた妖怪油すましというような、何とも形容しがたい奇妙な格好に加え、『カンフーカルトマスター魔教教主』の岩ジジイに酷似した状態で出現。顔面は『東方不敗』の任我行(ヤン・ゴーハン)と同じ様なメイクで、見る者(私)の気力を萎えさせる力を持っていた。若い頃力を欲する余り魔道に入りこみ、魔界への門を発見したのはいいが其処から先に進む事を躊躇い、以来魔界への門を守る任に就いたというが、徐少強にこんな役は似合わない。それこそ鄭少秋のやってた役をさせた方が良いと言うものだろう。もし仮にそうだったならば、劉松仁との対決も其れなりに見られたものになっていただろう。実に残念である。見せ場は、魔界への門に吸い込まれかけたユンピョウを自らと引き換えに救い出した所。この後魔界に入った徐少強はきっと悪魔の力を得て大魔王として復活するに違いないという私の淡い期待はジュディ・オングらの活躍によって木っ端微塵にされてしまった。

 

新仙鶴神針(邦題:ツイ・ハーク ザ・マジック・クレーン)

 やはりツイ・ハーク監督。トニー・レオン、アニタ・ムイ、ロザムンド・クァン出演。この作品にも劉松仁と競演しているが今回は味方同士。とてもじゃあないが『生死決』で見せたあの緊張感溢れる二人の演技は全くもって見られない。ツイ・ハークは徐少強と劉松仁の使い方が余りというか全然判っていない様だ。こんな使い方をするならば別の作品できちんと競演させてやって欲しいと私は切に願う。…尤も、この二人の暑苦しいドラマの顛末はATV『剣嘯江湖』…未だに香港のTV番組サイトでまともに紹介されていない。香港人よ、其処まで彼等を嫌うのか?確かに廣東語放送局が二つしかない香港でゴールデンタイムであるにも関わらず視聴率6%ってのはひどいと思うが…で判っているので最早彼等を主役に据えた作品は出ないような気もするが。
 この作品で徐少強はアニタ・ムイの師匠で且つ、ロザムンド・クァンの父親役を演じている。其の格好は『笑傲江湖』の岳不羣に酷似しており、この作品を初めて見たときは『きっととんでもねえ悪役に違いない。多分物語後半でアニタもロザカン(ロザムンド・クァン)もぶちころすか其れに近い所までやるはずだ』と期待に胸を膨らませたが…良い人ではないか!ちっ(失望の舌打ち)。ロザカンに一度は殺されたが劉松仁に土葬される寸前に巻物の魔力?で蘇り、アニタとロザクァンの二人を助ける所は微塵もあの徐少強とは思えない善人振り。ぜんぜん彼らしい思い込みの激しさとか殺意とかのダークな臭いがしない。台詞も善人のそれしか言わない。唯一徐少強演ずるキャラクターらしさのあるのは、嘗て危急の折、アニタ・ロザカンの二人のどちらかを選ばねばならなかった時、彼は忠義の道を取ってアニタを助けたという台詞を口にするシーンくらいだった。

 

The Pier(中文題名:碼頭)

 主演と書いてはいるものの其の内容は主演と言うには余りに程遠かったのでこっちに書く事にした。徐少強の役は彼方此方にガールフレンドのいるチンピラ。この映画は50年代の香港を舞台にしたもので、登場人物の1/3以上がハンチング帽を被っており、徐少強も身に付けていた。きっとあの時代の流行だったのだろう。話は新聞社に嫌がらせをするヤクザの証拠資料を巡って、新聞社、ヤクザそして警察が香港の裏道(多分九龍城)を走り回るというもの。それなりに街中でのバイクシーンなど見せ場も多かったが…何か物足りない。というのも、彼は証拠資料を守り通して、まんまと敵から逃げることに成功するものの、其のため物語の最後まで画面に出張ることが無かったから。もう一人の主演・梁家仁演ずる警察のアンちゃんに最後で主役を取っていかれるのが悲しい。見所としてはやたらとベッドシーンが多くて彼の上半身裸がやたらと目に付いた。彼の貴重なパンツ一丁の姿が拝める作品でもある。本作品は字幕無しだったがまだ普通話音声が入っている分だけ良心的といえた。時が経つにつれて低下して行く私の語学能力の衰えが憎たらしい。徐少強のなんとなしに漂うストイックな雰囲気はこの作品では全く無し。その代わり、殆ど陳小春並みの頭の軽そうな演技を見せてくれる。役柄としては『中華道士』での徐少強に似ている。ひょっとして、当時はイメージが固定されていなくて、彼のイメージを周りが模索していたからあんなのも出来たのではないだろうか。と考えれば彼の演技力の幅を感じるにはいい作品かも。結局この明るいアイドル路線は受けなくて、所謂悪役系になって行くのは我々の知る通りである。彼の顔は余りにアイドルというイメージからかけ離れていたのだ…。

 

最佳福星(邦題:十福星)

 今まで見た徐少強出演作の中でチョイ役中のチョイ役。オープニングから登場。アメリカの武器商人と日本赤軍の幹部の商談現場を写真に収めるが瞬時に相手に見つかり、逃走するも日本人に滅多切りにされた挙句死体を車ごと焼かれた。只それだけの役。確かに彼の残したフィルムから話が始まると言う点で重要人物だったのかも知れないが、台詞も無し、アクションシーンも吹き替えばかりで見るだけのものが何処にも見あたらない。何故あんな扱いなのだろうかと悲しくなってくる。サモハンの陰謀だろうか。髪型は『非情の街』『猛鬼舞廰』と同じ、おじさんカットだった。(情報提供:Megumiさん。多謝!)

 

天龍八部

 林青霞と鞏俐が繰り広げる『レズ美アン』なバカ映画。最早金庸の原著というものから完全にすっ飛んだ怪作である。で、私もこの作品のVCDを半年以上も前に購入していたのに、その内容の凹み加減にすっかり見る気をなくしてしまい、徐少強が出演していたにも関わらずその存在に気付かなかった。いっぷさんに教えていただいて初めて見返して『うっ、確かに徐少強がクレジットされている…』と相成った次第である。
 徐少強演じるは、丁春秋。もはや伝説と化した、逍遥派という一派から道を外れて作り出された『星宿派』の四代目の頭目である。逍遥派の北冥神功奥義書を奪った男が作り上げたこの拳法は、北冥神功の基礎を欠いた為に外道な練功法を用いて修行する。その結果得られるのが『化功大法』であり、その内容は笑傲江湖の任我行が使用する『吸星大法』と粗変らない。本来はその力を使い星宿老仙と畏れられ、野望に向って邁進する人物なのだが…作品のおバカな演出のお蔭で、間抜けな怪人レベルの存在に堕してしまっていた。確かに、この映画でも色々やってくれる。それは確かである。だが、『徐少強』という俳優が持つ独特の個性、押し殺した感情の爆発や、狂気が全くこのキャラクターからは感じ取る事が出来ない。唯単なる怒りっぽくて暴力的なジジイにしか見えないのである。
 この映画での徐少強のメイクは白髪に白髭、只のくそジジイそのものであった。この作品において、只一つの徐少強の見所は、北冥神功を身に付けた丁春秋が、本来の主人公・少林寺僧の虚竹の放った『気』の塊で上半身を吹っ飛ばされた後、復活を果たす場面である。『北冥神功は人を不死身にするのか!』と高笑いするのであるが、そこで現れた丁春秋の姿は黒髪、ロンゲ、おまけに矢鱈と若々しい上半身裸のヤング徐少強なのだ!しかし、彼が完全に力を得るにはまだ時間が掛かる事を林青霞達に見破られ、只一人五体満足に近い阿紫(張敏)によって己の影(本体)を破壊され、『俺は不死身だー』と云わんばかりに鞏俐、林青霞に襲いかかったがその影が破壊された瞬間に消え失せてしまった。やれやれ。

この映画でのナイス台詞:『俺は女なぞ信用せん!』阿紫の姉妹・阿青を殺した時の台詞
(情報提供:いっぷさん。多謝!)

 

痴情快婿 (英題:Fun and Fury)

 香港映画の典型、現場で撮影がどんどんエスカレートした結果、物語の始めと最後で内容がほぼ別物に化けてしまう恋愛⇒暴力映画。黎明演じるシンガポール刑事に兄をやられた復讐の鬼・笑面虎の役で徐少強が出演している。この男こそ最初単なる恋愛コメディだった本作をあっという間に皆殺し映画に変えてしまった張本人である。もっとも、『特別出演』だったせいで物語(黎明と周慧敏のラブストーリー)そのものには関与せず、徐少強の役目はひたすら映画を血腥い暴力映画に変える事だった。手下の外人を使って周慧敏の父親(鄭則仕)と其の組織を襲撃しほぼ壊滅状態し、そしてラストシーンで殆ど『仮面ライダー』か何かのシーンそのままにダムの上で黎明と立回る彼の勇姿は余りにカッコイイ。

 この話で徐少強は、『非情の街』などで見られるヤクザカットな髪型に黒の野戦服を身に纏、銃での戦いはそこそこに、所持していたサーベルで黎明を切り刻み、壮絶な流血戦を展開する(ああ、日本刀なら!)。勝負的には完全に勝っていた(黎明の腹を刺し、恐らく肝臓を抉ったに違いない)が、本来のアクション担当のヒーロー・陳勳奇に全身を蜂の巣にされて死亡。惜しいキャラクターだった。

 

激突!少林拳対忍者 (英題:Shaolin Fighters vs. Ninja、原題『飛刀又見飛刀』)

古龍の武侠小説が元となっている。倉田保昭、姜大偉達と共演。この映画で徐少強は小李飛刀・李尋歓其の人を演じている。倉田保昭演じるイェンと姜大偉演じるワイ(小李飛刀の息子・李懐)を自分と戦わせぬよう色々と手を講じるものの結局その気心は全て無駄になっていた。オープニングで彼が立回りで使用している『小李飛刀』と書かれた扇が実にイカす。車椅子での立回り、足が不自由になったと見せかけて実は全然何にもなっていないなどトリック性も高い。しかし、映画自体の内容ははっきり言ってしまうとちと問題あり。一応の筋は通っているものの継接ぎだらけの印象を拭えない。テキストとして古龍の原作でもなければ辛いのでは。何よりも、徐少強の息子が姜大偉と言うのに無理がある…。
(情報・資料提供:MEGUMIさん。多謝!)

 

老虎出更2

 ユンファのタイガー・オン・ビートと同じ名前がついているのだけれど、コナン・リーと徐少強が出ている事を除けば物語的にも全く関係無し。劉家輝&ロイ・チョンが悪役&殺し屋役で出演しているが、ロイ・チョンの無口且つ非情な殺し屋はいつでもどこでも同じ様な役で安心できる。物語的には前作と似ているが、徐少強の役柄は悪役から一転、厳しくとも使命感の強い刑事部長?徐Sirになっている。ついでにいうと友情出演のせいで顔はちょくちょく出てくるが台詞は殆ど無し。一体誰への友情出演かと、そちらの方に興味が行ってしまった。やっぱり『烈血風雲』からの絡みで劉家輝へのものなんだろうか。それともコナン・リーのほうだろうか。前作並みの活躍を期待していたが少々残念。
(情報・資料提供:MEGUMIさん。多謝!)

 

武状元・蘇乞児

 周星馳・呉孟達主演の古装片。云うまでも無くこの作品自体は彼らのモウレイトウ・ギャグを表面に出した作品であって、シリアスな作品を期待する方が間違いであるが、甄子丹の蘇乞兒と見比べてみると色々発見もある。甄子丹のそれが功徳を積む為に乞食に身を悴するのに対して、周星馳のは本当に身を持ち崩して乞食に落ちる(其の原因を作ったのが徐少強なんだが)のだ。嘗て大金持ちだった彼らが最終的に犬の餌を『美味いなあ、美味いなあ』と手掴みにして笑いあって食べるシーンがこの話の中で一番のお気に入りである。
 そういえば、金庸の射G英雄伝を始めとする一連の作品中で其の存在を確認される『丐幇』であるが、彼らの系譜は未だに途絶えておらず、現代も、大陸に其の存在が確認されている。2000年1月30日の時点で私が向こうのニュースで確認した。何ともはや。
 徐少強はこの中で、清朝皇帝を弑逆して皇帝になろうと企む武術家を演じている。しかし、どうもインパクトに欠けていてこれと言った印象が無い。精々、赤子を変な装置で殺してその血を呑んでいた位だろうか。 (情報提供:朝光明星さん。多謝!)

 

猛鬼諾言

 尹天照、呉家麗主演の吸血鬼ホラーもの。尹天照は呉家麗の婚約者役で、少々頭は軽いが30年前、長眉道長に師事していた過去を持つ(そこの人、『又か』等とは言わない様に)。で、徐少強はというと、その長眉道長その人の役だったりする。モノトーンの世界で繰り広げられる魔物・血魔(何故か黒マント姿)とのワイヤーアクションバトルは、何とも80年代的な懐かしさに溢れている。徐少強演ずる道長は吸血鬼の『このまま死んでしまっては長年の修行がふいになってしまいます』という命乞いを聞いて、『若しお前がこの場から出ずに修行に勤しむのであれば命は助けてやろう。しかし、約定を破れば最早赦さぬ』と一度だけ見逃した(映画の題名はここから来ている)。そして三十年後、土地の者から『立ち入り禁忌』とされる場所に住むこの怪物は、事情を知らぬ人間を誘い込んでは強姦し殺害していた。が、その内の一人が吸血鬼となった事で事件は顕在化する事となっていった…と言うのが粗筋。徐少強自身は映画冒頭の過去のシーンでのみ存在している為それ以外の出番もなし。但し、インパクトそのものはあるし、長髪だからカッコイイのは確か。ついでに久し振りの良い役でもある。
 余談だが尹天照と徐少強とは亞洲電視のテレビドラマで共演する事が多い。『岳飛傳』『劍嘯江湖』がその例であるが、私生活においても其れなりに関わりがあるらしく、 2000年3月13日付けで結婚した尹天照は香港に戻った後、皆とお披露目パーティを開きそこで酒飲みとして名を馳せる徐少強と義兄弟となす事で色々手伝ってもらうそうである。尹天照と徐少強…二人に共通点は余り見当たらないんだが…。人の縁とは判らないものだ。

 

決戦・紫禁之巓

 香港の2000年旧正月大作映画。鄭伊健と劉コ華主演の影でこっそり出演。物語は古龍原作の『陸小鳳』の改変作だがどこにも古龍の名前がなかった…どうゆうことだ?徐少強演ずるのは凌雲鶴という、正派の一武門の領袖でありながら其の裏で鬼王七盗という盗賊の顔も持つ男。女ばかりの弟子に囲まれた夢のような立場であったが陸小鳳いや龍龍七(張家輝)に正体を暴かれ、弟子も巻き込んで殺して逃げたものの、其処に現れた西門吹雪(鄭伊健)にたたっ切られた。物語の冒頭で出てきて期待させておきながらあっという間に殺されるあたり、『風雲』の于榮光と似ている。

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