雪花神劍〜The Snow is Red〜

淮揚奇侠・萬天成(徐少強飾)

領銜主演 姜大偉 徐少強 楊恭如 甄志強 他

第一〜二話

 南宋末、武林の正・邪派は互いに争い、怨讐を深めてゆく一方だった。邪派に属する魔女(耳+双)媚娘(米雪)は正派に追い詰められ身投げし、その娘小鳳((龍+共)施茜)は母の死に様から、母を追い詰めた正派への復讐を誓うが、身寄りのない彼女を助けた正派の首魁・羅玄(姜大偉)はそれを恐れて彼女に武功を決して教えようとはしなかった。
…そして時は流れ。成長した彼女は羅玄を師父として尊敬すると同時に慕うようになっていた。羅玄も成長した彼女に対して、想いを寄せるようになっていた。しかし、彼には正派の長としての体面もあり、ましてや親子ほども離れた娘に恋慕の情を抱くなど許され様筈もなかった。だが、毒蛇に噛まれた羅玄は自分を救おうと懸命になる彼女に対して、遂に手を出してしまった。
 自分の犯した事に対する自責の念から彼女に辛く当たった羅玄に対し、小鳳は悲しみ怒り、そしてその結果再び復讐の念に目覚めるのだった。しかし、武術を知らぬ小鳳に手立てはなく、彼女は兄弟子・陳天相(甄志強)を篭絡して羅玄の秘伝書と内功増進の力を持った仙丹を盗ませ、自己の増大を図る。彼女の所業に気付いた羅玄は彼女を殺そうとするが、結局自責の念から果たせなかった。そして、その年の冬、彼女は羅玄との一晩の情事から宿った双子の娘を産むのだった…

 オープニングから徐少強大活躍。彼の役は正派の名手の一人、淮揚奇侠・萬天成。上の画像をご覧になって頂ければ御分かりだろうが、ジジイでもないし、変な格好もしていない。現在の時点ではアクション場面しかないが、OPを見た限りではアクション有り、そして恋愛有りと実に期待させてくれるものがある。
 その他の端役達のキャラクターの濃さも捨て難い。小鳳の母・媚娘は他人の世話になっておきながら自分が敵に発見されたと知るやその真偽も糾さず一家皆殺しする凶悪さ。こんな荒んだ危険人物を放っておく事は確かに不妙い。どう見ても萬天成達が悪いとは到底思えん。この母親から『他人は絶対に信用するな』と育てられた小鳳も相当な人物で、羅玄を『師父、私は貴方が私の事を愛しているのを知っております』とロリコンを喝破する台詞で追い詰めてやってまうし、武功を入手せんと兄弟子・陳天相にしな作って篭絡するし(陳天相がその分やたらといじらしい…)、これまた大概である。この他、情事の後日、羅玄と小鳳とのやり取りが哀しくも笑わせてくれる。『貴方にとっての昨日の出来事は何だったの!?』『(きっぱりと)間違いだ』ばたん(扉を閉める音)。

第三〜四話

 子供が生まれて一月以上が経過した。産後の消耗から回復した小鳳は再び復讐の念を滾らせるが、羅玄がそれを許す訳もなく、彼女は武功を封じられてしまった。彼女は復讐を果たさんと山を降りようと躍起になるが、そのせいで崖から転落しそうになり、そこを萬天成に助けられる。彼女は切々と萬天成に自分を助けるよう哀願し、最初は拒んでいた彼も、結局は彼女の自殺未遂の現場に居合わせた事で彼女に対して情が移り、閉ざされた穴道を開放してやった。喜んだ彼女は萬天成を利用して自分の武功の強大化を画策、萬天成はまんまと彼女の計略に嵌った形となった。
 そして彼女の歪んだ愛情は遂に羅玄に対しての殺意と変じ、彼に解毒の仕様がない程強力な毒を盛ってしまう。何とか平静を取り繕って、小鳳の度肝を抜いた羅玄は、彼女が当惑している間に陳天相と共に赤子を抱いて逃走、羅玄は秘密の隠れ場・血池洞に隠棲し、陳天相に武芸を伝授すると共に、血池図という絵を渡す。この絵は血池洞の場所を示す地図で、これを持ってきたものに自分の武功を伝授すると言い含めて。
 陳天相も小鳳の毒で目を潰されたものの、まんまと小鳳の手から逃げる事ができた。これからは彼が赤子の面倒を見なければならない。しかし、娘の内一人、絳雪は目先の金に目が眩んだ男によって、「梅」という人物に売られてしまう。盲目と化した陳天相は残った赤子・玄霜を連れて絳雪の行方を探すこととなった…

 萬天成が女性に対する細やかな優しさを持ったキャラクターであり、女性に頼まれれば結局嫌とは言えない甘さを持った人物であることが明らかになる。其れだけに、この物語の敵役・小鳳のどえげつなさが引き立つ。彼女が弱き女である事を強調して何かと萬天成に泣き付く様は必見であろう。これに対して余りに素直に援助してしまう萬天成の姿は、滑稽であるというよりも同情を誘う。当然、萬天成にしても小鳳が邪派・媚娘の忘れ形見である事は百も承知の筈なのだが、にも関わらず穴道を通してやるわ武功は教えるわ、彼女の頼みは何でも聞いてしまうあたりに甘さという、新味を感じさせてくれる。私が求めていた徐少強演ずる主人公クラス登場人物は正にこう言うものを云う。
 その他の見所は兎に角、小鳳の見事なまでの暴走ぶりである。羅玄にも陳天相にも色仕掛けが通じないと見るや即座に取り付く相手を変えるし、自殺を萬天成が丁度見咎めるようにわざと試みたり、毒を盛った相手(羅玄)の目前に毒が回った頃合を見計らって現れ、散々云いたい事をぶちまけて『貴方は死の直前になって何を想うのかしら』って凄過ぎる。…こうして何話かを通して見てみると、羅玄が彼女に対して距離を置いていたのも判らなくもない。恐らく羅玄は小鳳のこうした邪悪な部分に気付いていたのだろう。萬天成は羅玄や陳天相程には彼女の内面を理解していなかったから引っ掛かったとも云えなくもない。全く予断が許されない。

第五〜七話

 小鳳の放った毒で失明した陳天相は、たまたま彼に興味を抱いた幇会の主・余罌花(黎淑賢)に助けられる。彼女は自分に対して何の衒いも無く接してくれた天相に恋心を抱いていた。父の死を乗り越え、新たに幇会の未来を担おうとした余罌花だったが、小鳳が現れた事で全ては崩壊する。小鳳に唆された幇会の者達は皆、魔教と結託して彼女に造反、陳天相を助けた萬天成の師兄・蕭(ドニー精武門の三師兄役の人)も、小鳳の毒計で捕らえられてしまう。挙句に蕭は幇会の秘薬・催幻覚性の花の汁を飲まされ、自分の縁者を手に掛けた挙句その妻を陵辱してしまう(妻はその直後自害)。毒花は萬天成によって燃やされたが、萬天成本人は小鳳の手でその炎の中に叩き込まれてしまい生死不明に。娘を探す小鳳は天相と罌花を追い、余罌花は陳天相を救うべく一人で小鳳に立ち向かって重傷を負いこれまた姿を消す。余罌花を探す陳天相は何陽鋲(鋲の本当の字は金偏に票)局の頭・周佩(關偉倫)に血池図を保管しておいて欲しいと渡し、玄霜共々姿を消す。
 そして十六年後、何陽鋲局の面々の前に成長した玄霜(陳(火韋))が現れ、其れに呼応するように魔教の活動が活発化し始めた。その中には、どう云う経緯かは不明だが、魔教の人間として働く絳雪(楊恭如)の姿もあった…

 血腥さ炸裂のダークな展開はまだ続く。そしてとうとう、萬天成も生死不明の身と相成ってしまった。無論あの程度で彼がくたばるとは毛程も考えてはいないが、物語の美味しい所を取る為に暫く出て来ないのはそれはそれで残念至極である。この物語は全二十二話なので余り物語に遊びが無く(それでも最近の日本のドラマのように13話で終了する事に比べれば十分長いのだが)、萬天成の出番もおいおい来る事だろう。
 その他の見所としては、やたらと動く陳(火韋)と楊恭如の姿が堪能できる事だろうか。十六年後(年齢設定は16歳♪)、成長してあの二人になる事はOP・EDから判ってたんだけど実際物語で出て来ると嬉しいな、と。絳雪は魔教に身を置いているものの、心までそのアナーキズムに浸食された訳ではなく、十六年後の主人公キャラクター・方兆南(袁文傑・『廣東十虎』の黎仁超)に何かと助言したりしている。今後彼女の過去がどの様に語られるのかも興味深い。その他、相変わらず人を追い詰めて破滅させる小鳳の暴走振りは、彼女が武功を得てから更に強化されている(師兄・蕭に毒花の汁を飲ませたのも彼女の差し金で、幇会乗っ取りも又然り)。十六年後になって、その権力・暴力共に魔教一と成りあがり、その技(飛刀の一種・チーチャオスォ…漢字不明)の伝承者も作ったようだ。

第八〜九話

 魔教の手から逃れようとした方兆南達はふとした事から右半身にケロイド状の炎症を患った女に会う。何と、それは小鳳によって毒を受けた余罌花その人だった。彼女は自分の変貌を陳天相に知られたくない一心で彼そして世間の目から身を隠していたのである。方兆南は彼女に脅され、毒を消せるかもしれない仙薬・金丹の入手しなければならなくなるが、何とか絳雪の助けで金丹を手に入れ、その帰りに陳天相と玄霜の二人と出会う。陳天相と余罌花はこうして十六年振りに再会し、二度と離れない事を互いに誓うのだった。
 彼女の身体に蓄積された毒を消す為、自分の血を余罌花に与えた天相。その努力の甲斐あって、余罌花の身体は再び元の美しさを取り戻した。しかし、そこに小鳳がやってきて…

 萬天成未だ復活ならず。とはいえ物語が面白いので問題は無い。
 天相、第九話にて死亡。お気に入りのキャラクターの一人だっただけに残念である。第八・九話は彼の独壇場で、見所も多い。特にお気に入りは自分の顔の事を気にして彼から身を遠ざけようとする罌花に『君は変わってはいない。君は私の思い描いていた通りの余罌花だ』と彼女の顔を覆っていた布をそっと取ってやさしげにその顔に触れるシーンである。そしてもう一つ、病み上がりで本調子ではない罌花を守る為に、自分は血を失って消耗しているにも関わらず必死の覚悟で小鳳に対して立ち向かう場面である。『昔は私の事を気に掛けてくれていたじゃない』と相変わらずの悪女ぶりを見せる小鳳に向かって『私はこの妻(罌花)を守る!』と啖呵を切り、敵わぬ事を十分知りつつもその場から一歩も退かないのが実に勇ましくて良かった。
 主人公・黎仁超…ではなく方兆南のモテモテぶりが開始。絳雪には金丹を餌に迫られて婚約(の真似事)するし、陳天相から玄霜の面倒を見てやってくれと託されるし、周佩の娘からは慕われてるし、すんごい状態。そんでもって、『弱い』のが又良い。出てくるキャラクターのほぼ全員に今の所勝てない位に弱い。それが陳天相に教わった刀術であと、どれだけの活躍を見せてくれるようになるのか、それも気になるところである。
 何となくだが袁文傑は『廣東十虎』の冷酷な黎仁超よりも、優柔不断で優しい方兆南のほうが似合ってるかもしれない。辮髪でもないし。

第十〜十一話

 陳天相から玄霜を託された方兆南は、彼女と共に失われた血池図の行方を捜す旅に出るが、情報を当てにして来てみれば、それは余罌花の小鳳を誘き寄せる為の罠だった。彼女は漸くにして出遭えた夫を奪われたせいで、今や小鳳に対する復讐の念だけで生きているようなものだった。共に小鳳を討とうと提案する二人だったが、彼女はあくまでも自分の手で仇を討つと云い、それを断る。彼女の計略は功を奏し、まんまと偽の血池図を奪い去る魔教。余罌花は偽の地図を使い小鳳を待ち伏せ、彼女と共に相打ちの覚悟で戦いに臨んだが、そこに現れた方兆南達のせいで計算が狂い、結局誰も死ぬ事が無かったばかりか罌花自身が小鳳によって湖の中に叩き込まれてしまう。その最中、小鳳は玄霜が自分の娘である事を知り、何とか自分の手に入れようとするのだった。
 懸命に逃げる方兆南・玄霜と、道中で一緒になった元少林僧の南怪・北怪の四人だったが、彼を弟子にしようと画策する南怪・北怪に迫られた兆南は誤って崖から転落し重傷を負ってしまう。
 一方、上官達は魔教の勢力が既に各地の幇会を食らい始めている事に気付き、愕然とする。それどころか、最早恐れる物が無いかのように、正派の領袖たる少林寺すらも壊滅させようと小鳳は部下に動員を掛けていたのである…

 萬天成の出番は相変わらず無し。早く出て来い…
 方兆南のモテモテ状態は相変わらずで、彼が優柔不断なせいで色々な女の子に慕われている事がそれぞれにバレたというにも関わらず現状維持。尤も、その事で彼女達の心情にも変化が起こり始めたのは確かである。それでも方兆南は『彼女は彼女、君は君だ。私は君(玄霜)と共にいる事を決めたんだ』とのたまわっているあたり、凄い奴だ。重症を治す為に複数の内力を注がれて苦しむシーンもなかなか。
 今回の見所は余罌花が陳天相の遺体を掘り出して、それに向かって愛おしそうに話し掛けるシーン。冷静に考えてみれば猟奇で怖いシーンなんだけれど、凄く綺麗で彼女のいじらしさとか悲しさの方が先に立つ。この物語の登場する女性で一番可愛い女性だけに…
 あと、対照的に兎に角怖いのが、小鳳。血池図に隠された羅玄の居場所に赴くのは何故かと絳雪に問われ、『私は必ずあの男に遭って、自分の犯した過ちが何だったか思い知らせてやる。私にはそれが楽しいか楽しくないかは関係ない。只、(自分を捨てた)彼を一生苦しめてやるのよ』と決意満面で言うくだりがたまらん。それでいて、余罌花の張った罠である羅玄の絵(誰だ?書いたのは)を見て、嘗ての思い出に浸る辺り、複雑な性格の持ち主だ。これが所謂可愛さ余って憎さ百倍というやつか。

第十二〜十三話

 南・北怪や絳雪に内力を送り込まれた結果、方兆南の功力は格段の進歩を見せ、一気にその武術家としての能力が向上したのだった。正派の人間が魔教の香毒生産地に攻撃を掛けたものの返り討ちに合い、上官の息子・ウェイが捕らえられた事を知った彼は、ウェイ救出に成功する。が、ほんの行違いから誤解された兆南は誤解を解くために又正派の人間に追われてしまう。彼は大方大師に事の次第を述べ、漸く事の収拾を付ける事が出来たのだった。  それからほどなくして、魔教は少林寺に襲撃を掛ける。そこで玄霜は小鳳から自分がその娘である事を知らされる。彼女はその事に驚き悲しむが生みの親より育ての親、小鳳が養父達を殺害した事を彼女には許せず、小鳳を拒絶、改めて養父の仇討ちを決心するのだった。一度は玄霜の事で退いた小鳳だったが、今は中立の立場を取る少林の先輩に『三度の勝負で決すれば良い』と助言を受け、再び襲来する。大方や上官もその案に従い決闘に応じた。一勝一負けの状態で絳雪と相対する兆南。簡単に決着は付いたが、それは彼女が自ら選択した事だった…彼女は自分が殺される事で方兆南の心に一生その記憶が留まる事を望んだのだ。

 萬天成は何処に…早く出てこーい。
 今回の見所は絳雪が自分の苦しい胸の内を明かし、自分が死ぬつもりである事を武林の先輩に告げるシーン。こう云うシーンを見るに付け、ああ、楊恭如だと改めて認識させてくれる(何が)。その他、玄霜が自分の出自を知っても尚、養父の仇を討つ覚悟をする場面や、強くなっても相変わらずの方兆南が南北の二人に『お前、一体誰が好きなんだ?』と突っ込まれている所を目にして逃げた玄霜を追った方兆南が『一生付いていてやると言った私を信じられないのか?』と又同じ様な事を言って玄霜の気を静めるシーンが記憶に残る。どーでもいいけれど、これって彼の義務感から出た言葉であって、彼の感情を表す言葉ではないのでは。玄霜はそれで嬉しいみたいだけれど、これはこれで残酷だと思わなくもない。まーったく黎仁超は(違う

第十四〜十六話

 上官の甥、ウェイは元々方兆南の親友だったが、ある晩兆南を呼ぶ為に絳雪が吹いていた笛の音に誘われて彼女に出会ってから、嫉妬心から段々確執を深めていった。そしてついに彼は上官主催の武術会で兆南に挑む。彼は方兆南の実力に対して(多分)侮っていたのだが、方兆南の内功は南北両怪の輸功等で驚異的に高められており、結果苦杯を舐める事となった。怒ったウェイは皆の前で兆南が敵である絳雪と付き合いがある事をばらした挙句、彼に傷まで負わせてしまう。
 乱心の訳を問われてウェイは『私は絳雪を愛しているのです!』と叫ぶ。上官はそれを聞いて怒り、彼を上官家から追放してしまう。そして彼の落ち着いた先は魔教だった。正派を裏切り邪派についたウェイの策を見抜けず、魔教の本陣に突入するも次々に毒に倒れる南北両怪そして上官。上官はウェイの裏切りに気付くが全ては手遅れで、彼は自ら自刃した。この光景を目の当たりにしたウェイの心は完全に闇に落ちてしまう。
 その一方、玄霜は絳雪の腕に自分と同じく字が彫られてあった事を発見し、つかの間とはいえ、姉妹として邂逅を果たす二人だったが、玄霜は(やっぱり生きていた)復讐に燃える余罌花に毒を飲まされており、その解毒に体力を使った絳雪は誤って小鳳に古井戸の底に落とされてしまった。皆が彼女は死んだものと思っていたが…

 第十六話にて萬天成復活!顔半分を覆う怪しい銀仮面まで付けて再登場、しかも強い、絶対に強い!
 記憶を失った萬天成は自らを回生(蘇り)と名乗り、余罌花を救おうと現れる。彼は殆どインプリンティング状態で余罌花の事を気に掛けており、その混乱した頭は既に死んでしまった陳天相に対して嫉妬を抱き、その墓を壊そうとまでするほど変になってしまった。…やっぱし徐少強だ…と期待通りの役柄を見せ付けてくれる。しかし、今回彼は非情(魔教の人間を人質ごと殺す)であってもその行動原理はあくまでも罌花一人を守る為になされているので違った印象を抱かせてくれるのは確か。罌花は十一話で湖に叩き込まれたがそこを萬天成に助けられており、その為余り接点のなかった二人がこれで縁が出来た事になる。変な銀仮面を付けた状態で自分の中の断片的な記憶に苛まれ『俺は一体誰なんだ!?』と悩む姿がナイス。
 他の見所は何と言ってもウェイ。彼の暴走振りは小鳳のそれに匹敵するキレを見せている。親代わりでもあったはずの上官を手に掛けようとする(結局自分で手は下せなかったが)わ、自分の弟に判断力を失わせる点穴法を自ら行うわ(しかもその理由を全て方兆南におっ被せて自己弁護する)、血池図に託された秘術(羅玄に教えてもらうだけなんだけれど)を小鳳から出し抜こうと小鳳の二番目の弟子を抱き込むし、中々の悪人振りを見せ付けてくれる。

第十七〜十八話

 絳雪を救ったのは父・羅玄その人だった。彼は血池の力によって小鳳の盛った毒に耐え、十六年もの間この洞窟で暮らしていたのである。この地に乗り込んだ小鳳達魔教は、次々に中の仕掛けによって命を落として行く。その途中で絳雪の生存を確認した小鳳は母として彼女と玄霜に接しようとするが、二人は彼女との確執の深さ、そして彼女の性格を知るが故に彼女を拒絶する。『全て羅玄のせいだ!』彼女はそう叫ぶと一人洞穴の奥に羅玄を求め、ついに羅玄を発見する。しかし、羅玄は長年の人と交わらぬ生活の為に自分は俗世の事を小鳳達の事も含めて忘れ去ったと淡々と述べるのだった。余りの話に逆上した小鳳は掛けつけた二人の娘に剣を向けるが、それでも尚、羅玄の反応は冷淡な物だった。そこに記憶を求める萬天成と復讐相手を求める余罌花の二人が乱入し、羅玄は余りの煩わしさから逃走する。萬天成は自分の名を呼んだ羅玄を追い、余罌花は小鳳を追う。しかし、小鳳は自分の思い描いていた復讐絵図と全く違った展開に自分を見失い、宛ら抜け殻のような状態だった。
 それを見て、小鳳を殺す隙をずっと伺っていたウェイは好機と捉え、彼女を殺そうとするが方兆南に阻まれる。しかしそこにウェイに騙された事を知った二師姐が玄霜を人質にして方兆南にウェイを殺せと命令、二人の戦いが始まった。しかし二師姐は逆にウェイの楯にされて兆南の剣に掛かり、その際彼女は偶然に洞穴崩壊の為の仕掛けを作動させてしまった…

 萬天成、今回は見せる場面有り。まず彼は小鳳に懲りもせず(記憶を失ってるから仕方がないが)又もや騙され、余罌花に瀕死の重症を負わせてしまう。しかし、陳天相が居なくなって孤独に苛まれた彼女が萬天成に『自分が失敗したら後は頼みます』と渡した陳天相の形見を見て、彼女の言動が一人にはなりたくなかったが故のものだった事に気付き、正気に戻る。一度は彼女と共に洞穴で死ぬ事も考えた様だが方兆南の叱咤に意志を奮い立たせ、皆と脱出する。最早助かる可能性もなく『一人にしないで…』とせがむ彼女に萬天成は『付いていてやる』と答える。ここで彼は方兆南の接近に気付き、とっさに彼に近付かない様に止めると『罌花、天相だ…』と彼女に嘘を告げた。彼女は薄れ行く意識の中、方兆南を陳天相と見誤り、そのまま満足した様に事切れる。彼女の死に顔を見て何とも遣る瀬無さそうな表情の萬天成が実に良い。映画では殆ど見られない(悪役ばっかやってるからだ)貴重な機会である。変な仮面してなければもっとカッコイイのだが…。
 その他、小鳳を暗殺しようと企むものの失敗し、毒のついた飛刀で傷つきさ迷ったウェイが、裏切った筈の周惠瑛に助けられ、自分の捨てた上官堡にこそ自分の居場所があった事に気付き、後悔のまま死ぬ(救いはあったが)場面、結局玄霜、絳雪の二人共に離れられてしまい呆然とする方兆南など見る物多し。

第十九〜二十話

 死ぬ寸前のウェイが託した遺言(魔境を消滅させる事)を受けた周家の一人娘・惠瑛は自分の身を省みることなく、相討ち覚悟で小鳳に挑む。彼女は魔教の本部で手に入れた毒薬を片端から服し、自らの血液を毒と化してわざと小鳳を挑発、一撃を受ける事で小鳳の体内に毒を打ち込む事に成功する。しかし、小鳳に受けた一撃と、体内を駆け巡る毒によって彼女もまた方兆南達の目前で息を引き取るのだった。
 一方、毒を受けた小鳳は、自分がよもや毒にやられるとは思いもよらず狼狽し、刻一刻と迫る自分の死期に恐怖する。彼女はあらゆる毒に関わる書物(中には五毒教のも)を読み、解毒法を試みるがどれも決め手に欠けていた。そこで小鳳は内家功に優れた武術の達人ならば自分の気息を操り、毒を体外に排出させられると思い付き、ある男を再び騙す事を思い付いた。そう、記憶を失った萬天成である。  事もあろうに、小鳳は怒りに燃える萬天成に向かっていけしゃあしゃあと『私は貴方の十六年前に生き別れになった妻です!』と嘘をつく。余罌花の事も有り、『信じられるか!』と叫ぶ萬天成だったが、彼女が予め仕掛けておいた演出と巧みな話術のせいで、又もや騙される事に。だが、どうしても相手を信じきれない萬天成は悩んでいたが、ある雷鳴の夜、炎を見て自分の記憶を取り戻す…

 萬天成が又もや騙された…と思ったら今度は自力で立ち直った様だ。全く、この萬天成と言うキャラクターは腕は立つが少々人間的に甘い(若しくは頭が弱い?)せいで女に振りまわされまくっとるな。彼が記憶を取り戻すまでの小鳳とのやり取りは見ているこっちがもどかしくて仕方がなかった。其処がこのキャラクターの「売り」なんだけれど。取り敢えず悩んだ結果暴れるのも徐少強らしいが、記憶を取り戻してからの彼の行動(取り敢えず騙された振りを続ける)はもっと徐少強らしくてナイス。
 この2話で主要キャラが二人死ぬ。一人は前述の周惠瑛で、もう一人は前前からチョロチョロ出ていたイェン((火韋)烈)である。彼は嘗て羅玄に恩を受け、勝手に師匠と呼んでいたが、偶然とは云え羅玄の身体を元通りにした(自分の腱を与えた…)事で羅玄に弟子と認められる。だが、小鳳に倒され、彼は自分が羅玄を治した事を誇らしげに告げて死んで行く。この役者((火韋)烈)も良い味出してるなあ。今回、見所は上記二人の死に様と小鳳の大嘘である。
 方兆南達は…というと、羅玄の剣『雪花神劍』の練習に明け暮れていただけの気がする…

第二十一〜最終話

 方兆南を慕う玄霜、絳雪の二人の恋の行方は、一時は玄霜が姉の顔を立てて身を引いた形になったものの、結局、絳雪の方が玄霜を立てて身を引くと言う形となった。ああ、楊恭如演ずるキャラクターが主人公とハッピーエンドを迎えることは又無かったか…それはさて置き、本編。
 羅玄、方兆南を追う小鳳達魔教は方兆南の発見を機に、殲滅を図ろうとする。しかし、正気づいた萬天成の助けによって企みは頓挫し、小鳳の大弟子まで倒されてしまった。小鳳は替え玉を使い時間を稼ぎ、その間に羅玄を発見、彼と戦うが流石に足の治った羅玄には歯が立たず一時退散する。萬天成は彼女が羅玄と戦った事を知るや、今こそ復讐の時と彼女を襲うが、彼女の会得した内功は凄まじく強力で羅玄との戦いにも聊かの傷も負ってはおらず、読みを誤った萬は逆に左腕をもぎ取られてしまった。傷ついた彼は羅玄達に助けられるがそれが仇となり隠れ家を発見され、自我を持たぬ大方大師、ウェイの弟ファン、そして蕭の三人手錬に急襲される。しかし方兆南の機転で彼らは眠り薬を吸い込み、羅玄の手によって正気を取り戻した。
 彼らが戻らぬ事を知った小鳳は怒り、ついに最後の刺客として大方の師匠・覚生(盧惠光)を向かわせた…方兆南達と片手を失った萬天成の運命や如何に!?

 とうとう最終話を迎えてしまった。萬天成の行く末は置くとして、小鳳の自己正当化の屁理屈が最終回でも炸裂する。なんと彼女の不良化の原因は全て羅玄にあると云うのである。…幾等何でもそれは通らんだろう。愛されなかったと言う事には同情こそすれど、其の煽りを受けて死んだ人間の数を考えればそんな手前勝手な台詞が受け入れられようも無い。羅玄は小鳳の『貴方は私を愛した事があったのですか?』という問いに首を振り、彼女はそれを聞いて泣きながら自害するのだが、余りの簡潔な答え方に笑いを禁じえなかった。終幕もちょっとダークで後の物語が想像出来て良かった…

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