お気に入り鄭秀文〔Sammi Cheng〕の曲

彼女の歌声はパンチが効き絡みつくような感覚がある。王菲系の歌声とは正反対に属すると言えば良いか。彼女はダンサブルなアップテンポの廣東語曲を得意とし普通話バラード歌謡曲は発音の問題上からかあまり得意ではない様だ。彼女は1988年、16歳でデビューした中堅の歌手であったが、ワーナーに移籍したその頃からアップテンポの歌曲が流行りだしたお陰で、彼女は一挙にブレイクした。立て続けに賞を取り、当時アルバム発売速度が低下し始めた王菲に取って代わった形になったのだ。僅かな内に彼女は普通話歌曲も含めて数枚のアルバムを発表、それらが大ヒットし第2の歌后の地位を確立させた。現在はやや落ち着きを取り戻し数ヶ月に一枚は確実に廣東語曲のアルバムを発表しつづけている。

彼女と言えばアルバム発表の都度イメージを変える事でも知られておりファッションリーダーとしての地位も得ている。これだけころころイメージを変える事が出来るのも彼女の才能であろう(彼女はよおく見ると眉毛が殆どない(笑)。それゆえに化粧によってそれだけ顔の印象そのものすら変える事が出来るのだろう)。

粤語

『愛有什麼用』3:15

アルバム「我們的主題曲」に収録。黎明Leon Laiと競演した映画「我愛P到殺死P」の主題曲。映画のオープニング、CDショップでのサイン会でのシーンに使用されていた。完全なダンサブルナンバーで彼女の面目躍如の一曲である。この曲を初めて聞いたのは帰国してからの事で当の映画は曲に興味を覚えた後VCDを購入して鑑賞した。この映画、ストーカーに狙われたアイドル歌手(まんま)役の鄭秀文を彼女が男嫌いである事から曾志偉エリック・ツァンの詭計でゲイと云う事にされた黎明がボディガードするというもの。ビデオクリップもこの映画のシーンを流用していたが所属会社の関係から見事に黎明のシーンが抜け落ちていて笑えた。歌の内容はとどのつまり「愛って何の役に立つの?一時人を感動させるだけで現実の問題に何か影響を与える事など出来やしないのに」である。こう書くと中島みゆきの「見かえり美人」等、一連の歌みたいだが内容の割には前述した通りテンポが良く、軽快に耳に流れてゆく。感覚としては振られた後の女がやけになってディスコで踊りまくるようなものだろうか。

『放不低』3:58

同名アルバムの主題曲。ワーナーに移籍して二枚目のアルバムで前作「捨不得@」と共に彼女のブレイクの原動力になった。この歌は当時香港無線電視「翡翠台(TVB)」のゴールデンタイムに放映されていた「當女人愛上男人」というドラマの主題歌でもあり、私は当時广州でこの番組を観ていたが留学生楼の停電騒ぎに託けたTVケーブルの異状によりドラマの後半が全く見られなくなった事でえらく不愉快な思いをさせられた経験がある。あの留学生楼の電気の状態は今思い出しても腹立たしい事この上なく、不意に上昇した電圧(220Vの電圧が一気に350V以上に変化した)の為破壊されたCDウォークマン用のアダプタの数は二つにも上り、くそ暑い最中に停電したせいで扇風機が作動せず眠る事が出来なかったりとか停電の回数が粗1ヶ月に最低2度程度発生したりとろくな事がなかった。ああ腹立たしい。…閑話休題。この曲の内容はバラードの王道、弄ばれている事を知りつつもそれでも男と別れられない女心を歌ったもので、彼女のねっとりとした歌声がなんとも云えない、縋り付くかの様な雰囲気を醸し出している。前述の『愛有什麼用』の詞の中に「不必大唱放不低(放不低を大声で歌う必要なんかない)」というのが出てくるがまあ愛嬌と云うものだろう。

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