名剣

名剣 The Sword

連環（徐少強飾）と陳鐡衣（高雄飾）

領銜主演　鄭少秋　徐少強　陳琪琪　田豐　魏秋華　高雄

粗筋

　花千樹は剣を以って江湖で知られた人物で、向う所敵無しだったがある日、突然消息を絶ってしまった。しかし彼に挑もうと決心した若き剣客、李(鄭少秋）は彼と戦い名を揚げる為にあらゆる手を付くし、遂に大枚を叩いて情報通の白鴿老人に花千樹の居場所を突き止めさせたが…彼は女友達の良人で野望を持つ男、連環(徐少強)の遣わした刺客、陳鐡衣に襲われ重傷を負ってしまう。そこを花千樹の仲の良い（恋人)、鉉姫に救われた李。そんな折、花千樹の娘、花盈之が連環の手下に捉えられ、寶剣と引き換えにその身を返すと書状が届けられる。李は彼女を救う（且つ其の事で花千樹と戦う口実にする）為に一人、戦いに赴いて行く。

　『生死決』よりも三年前、８０年の作品。特徴としては程小東が単なる武術指導のみで監督としては噛んでいない点、が目に付く。しかし、程小東のアクションだと言うのは直にわかるだろう。この作品においても徐少強は連環という、これがまた悪人を例によって例の如く演じている。何作か目にしていてこの辺りで、徐少強が演ずる悪役は取敢えず強く、そして悪賢い人物である事が粗イメージとして確定してきた。
　この連環と言うキャラクター、外面だけはやたらと良いのだがその内面は中々どうして侮れない。夜中の３時に友人[李]と談笑していた（と言う割りにはしっかり抱き合っていたが）妻に対して、李がいなくなってからにこにこしながら「無礼な色魔だ」と言い捨て、妻が『そんな事をする人ではありません！』と弁護すると表情はそのままでやおら彼女の髪の毛を掴んで引っ張りまわすと言うビジュアル的に見て結構ショッキングな行動をやってのける兇暴さを有している。
　物語において徐少強の出番は決して多いとは云えないが悪の大ボスとしての貫禄や物言いはやっぱりカッチョ良い。李が花千樹との決闘で傷を負うと直に刺客を送り出して殺させ、あまつさえその咎を李に巧く被せる所など極悪人の鑑である。その非情さ・非道さを李と花盈之に見破られた時、彼らが「貴様には剣士として有るまじき行い、其れでも剣士か！」と罵られた時でも彼は件のニコニコ顔で「剣を持ち、振るうもの全てが剣士だ。」と云いきってしまうふてぶてしさは『うむ』と納得させるものがある（違うて）。又、所持者を狂わせる妖剣「塞星剣」の魔力に取付かれ、結局妻を惨殺する（この時の演出が昔日本の時代劇（大江戸捜査網など）で使いまくられた『村正に見入られた人物は紅い光で顔を染める』演出其のままで笑わせてくれる）あたり、どうも自制心には欠ける様だ。
　彼の死に様は今まで見た徐少強悪役の中で最高に笑わせてくれた。李と互角以上の戦いを見せる連環は、李を壁に叩きつけると自身は正反対の場所の壁を利用し、その反動を使い一直線に飛行、空中を弾丸の様に切り裂き李を狙った。そこをとっさに受けとめた李の寶剣は妖剣を遥かに凌ぐものだった為、連環の剣尖が触れるや否や妖剣を真っ二つにし、そのままの勢いで連環自身も李の寶剣で顔面から真っ二つに両断されてしまった。この辺りのワイヤーアクションや特撮がしょぼかった為、どうしようもなく脱力した笑いを私に提供してくれた。今までの渋さがこの演出で全て吹き飛んだと言っても過言ではなかった。この辺りの演出が未来になって『スウォーズマン東方不敗』の、剣気で馬が真っ二つに割れる演出に繋がっているかと思うとそれなりに感慨深いのだが、そんな所まで考えるのは……良い人に違いない。

戻る