お気に入りK豹〔HeiBao〕の曲

最近になって聞くようになった。別にファンキー末吉のラジオ番組に感化された訳ではないと思うがFM COCOLOを聞いて偶々かかった歌が気に入った事は確かだから否定も出来ない。K豹の音楽は一言でいえば荒い。荒いがパワーがある。小手先のテクニックや歌詞だけではない何かがあるのだ。それは彼らの生活する中国と言う国の環境に原因があるのだろう。彼らの歌に流れる言いようのないフラストレーションは音楽と言う形を借りて噴出する。それは生活環境に対する物でもあるだろうし、個人的な物でもあろう。私の所持しているのは第三期メンバーとなってからの作品〔VとW〕で、様々なメディアから商業主義だなんだと批判された後のものであるがこれで商業主義だと言われても今一つぴんと来ない。技術的には確実にそれ以前よりは向上しているしボーカルも初代、二代目と比べても遜色はないと思うのだが。となると後は歌詞の内容だが前二作の歌曲の内容がそこまで反社会的とも思えないし〔もしもそうだとすれば最初から発禁処分だろう〕。ま、メンバーがあの国にいる限り少なくとも日本のカッコだけのやつよりは数百倍熱い作品を創り続けてくれるに違いあるまい。

 

普通話

『無是無非』

キッチュなオープニングから始まる同名アルバムのタイトル曲。何だかんだいってもこのアルバムが出た当時最大にヒットした実績は動かないし、私が彼らの歌を聴く切っ掛けになったのもこの曲からである。確かに「売れる」為の要因を多く含んだアルバムであるが、彼らはそれで生活の糧を得、私達は満足するのだからそれで良いと思う。自分たちのやりたい音楽が万民に受け入れられればいいがその為には万民に認知される存在にならねばならない。『商業主義』として批判した連中は彼らの生活の責任を取れるとでも言うのか。結局趣味を超えて生活の糧とする以上売れねばどうしようもないのである。留意すべきは彼らの生活しているのは何と云ってもあの中国であると云う事である。特に音楽市場におけるそのシビアさは凄まじく、彼らは正版の総売上枚数の実に10倍以上とも言われる海賊版の横行にも挑まねばならないのだ。この間来日した時ラジオにゲスト出演した彼らはライブ巡業が最大の儲けであるみたいなことを語っており、それが洒落で無い事を実証していた。何故こんな事になるのか。それは海賊版の値段がどうしようもなくオリジナルよりも安価である事が挙げられる。一枚40〜50元強〔中国本土の歌手の場合。香港・台湾系の版権物が60〜80元。これは物価の高い广州の場合であって他の場所ではもっと安いと思われる。〕の正版に対し海賊版は15〜30元と安く、しかもCDは一度原版を入手してしまえば、機械を使って幾らでも増産できるから実際どれだけの海賊版が存在しているのか想像もつかない。この前中国人の友達に何故こうなるのかと聞いたらその子は悲しそうに「私達は収入が少ないからいけない事だと判っていてもそんなのしか買えないの」と答えてくれた。…その通りである。大体、規制されていると言う割には海賊版CDが堂々と商店で取引されているし、あげく正版のCDを売ってる店よりもそう云った海賊版販売店の方が遥かに数が多い、それが中国と言うところなのだ。私もご禁制の海賊版販売店に公安の連中が入って嬉しそうにCDを入手しているのを何度か目にしている。…駄目じゃん公安。それは兎も角。この曲の歌詞の内容は女に向ってこれから一緒にやっていこうよ、俺を信じて。決して簡単には物事は旨く行かないけれど自分たちの選んだ道を進もう、物事の是非は自分の考え次第でしかないのさ、というもの。本アルバムに収録されている死んだ唐朝メンバーの一人を悼んだ歌『放心走ロ巴』も秀逸なバラードである。

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