猛鬼舞廰

猛鬼舞廰～Ghost Ballroom～

領銜主演　徐少強　劉家輝　盧惠光

粗筋：
　ナイトクラブのホステス・阿美はヤクザの男友達・神鵰に売春からヤクまで、酷い目に合わされていたが遂に警察に出頭する事を決意する。だがその事を知った神鵰は手下を使い、彼女を香港名物高層アパートの阿美の自室から地面に叩き落して殺してしまう。だが、彼女の男への怒りは彼女を幽霊として蘇らせ、身の毛もよだつ復讐劇が開始された…のだが。次々と阿美を殺した手下達が死んでゆく事に恐怖を覚えた神鵰は道士から幽霊除けの呪術を伝授され、取り殺されまいと懸命になる…。

　徐少強主演のコメディ・ホラー（でいいのだろうか？）。この映画で徐少強は『非情の街』と同じ髪型ながら、180度違うキャラクター・鶏毛を演じている。写真の一番下で大口開けて呆けているのが徐少強演じる鶏毛（英語名Mister feather）である。彼は昼間はしがないタクシーの運転手であるが夜は強運で鳴らしたギャンブラーという二つの顔を持っている。そして其の仲間が劉家輝と盧惠光である。この三人がどう、幽霊騒ぎに関わっているのか、というのがこの話の味噌である。死んだ阿美はこの三人と交友があり、阿美の妹分の二人のホステスが徐少強、盧惠光のガールフレンドなのである。で、幽霊小姐が道士にコテンパンにやられて逃げ延びた所で出遭うのが、博打仲間にイカサマで大金を分捕られてくさっている鶏毛。彼はタクシーの後部座席に幽霊がいる事に気付いて悲鳴を上げ、逃げ出そうとするが其れもままならず、結局幽霊に力を貸す羽目になる。この辺りの情けない演技は到底『非情の街』でみせたあの恐ろしいまでのキャラクター・テッドの痕跡は微塵も感じさせない。彼の演技力の深さを我々に見せ付けてくれる。彼が幽霊から頼まれた事、其れは年頃の女性の死体の九穴（暇な人は存分に数えてみるが良い）を封じ、最後に死体の口から陰の気を吸い出して幽霊に与えるというものだった。彼は病院の死体置き場に忍び込み、さっさと仕事を終えようとするが、死体の管理者の医者が何度もやってきて彼の仕事は中断する（この間鶏毛は其の都度ベッドに横たわりシーツを引っかぶって死体の仲間入りをする）。彼は九穴を塞ぐ為ガムテープを使用するが医者が着た為彼はやんぬるかな、顔面以外の部分を塞ぐ為に自分の指を使い、急ぎ使命を完遂する事に成功する。そして彼は医者が死体置き場から出るとすぐに『何で俺がこんな事を？もう嫌だーッ』と叫びながら靴と靴下を掴んで裸足で病院の廊下を疾走する。この時私の頭の中では何故か『サザエさん』のオープニングテーマが掛かっていた。別に陽気でもなんでもないんだけれど。幽霊は彼に有難う、と礼を言うと消えてしまう。彼は『もう二度と来るな！』と叫んだ。しかし、幽霊が最後の敵と付け狙う神鵰は呪詛によって彼女の接近を寄せ付けない。幽霊はこれも縁だとばかり、再び鶏毛の前に姿を見せる。鶏毛は再びイカサマ集団と博打を打っていたが幽霊が横で手助けした為に彼は快勝する。悠々と帰ろうとすると其処に幽霊が出現、彼は狼狽して『帰れ来るな俺は関係ないだろう』と喚くが、彼は幽霊が手助けした事を知ると、『判った。次の手伝いで貸し借りは無しだ』とあっさりと幽霊小姐の手伝い…今度はこの日の晩十二時までに神鵰の部屋に隠してある呪符を探し出して破壊する事。幽霊はこの日の十二時に幽霊としての活動限界が来てしまい、これ以上現世に留まる事が出来ないのだ…を承知する。彼も神鵰と其の手下には仲間共々腹を立てていたせいである。彼は流石に他人家に入りこむのは容易ではない事を感じ、カンフーの達人・劉家輝とお調子者だが頭は回る盧惠光を呼んで事に当った。自室に引篭もり「今晩十二時を過ぎない限り一歩もここから出るものか！」と叫ぶ神鵰に対して盧惠光が取った策、それは彼の部屋の前で煙を出して消防隊を呼んで彼を引きずり出させるというものだった。何束もの線香に火を付けようとする鶏毛に盧惠光は『そんなんで足りるかよ』と持ってきた石油缶に新聞紙を一杯入れて火を付け、其処に自分の小便を掛けて煙を出す！やって来た消防隊に彼らは『この中が出火の原因です』と大嘘をついて強行突入させた。消防隊は手斧を持っており、神鵰の部屋のドアはあっという間に破られる。香港は地震がないのと土地が狭い事から高層建築が立ち並ぶのだが、其の分ビル火災は最大の惨事を生むことになる。だから消防隊の役割は日本と比べても遜色ないほどでかい。同時に突っ込んだ劉家輝が神鵰をぶちのめして消防士に連行させ、残った三人は家捜しを開始した。この捜索のシーンがコメディらしく、三人が部屋中に散って片端から小物、衣服の類をぽいぽいと撒き散らす。あれで捜している事になるかどうかは結構怪しいが、盧惠光が部屋に鎮座する關公（三国志でお馴染みの關羽。中国では財神）の像の前に置かれてあった香炉から呪符を発見、鶏毛は即座に其れを火にくべて始末した。すると、幽霊はここぞとばかりに神鵰を取り殺し、彼女の復讐は完結。幽霊は消滅する前に自分が死んだ場所に幽霊を連れてゆくよう懇願、三人は其の願いを聞いてやった。すると彼女は消滅し、後には彼女の纏っていた紅の上着が残った。三人は互いに『お前が受け取れ！』と上着を押し付け合うが、幽霊の声が響き、『助けてくれたお礼に其の上着を着けていれば博打で必ず勝つ事が出来ます』と告げた途端に彼らは『俺が貰う!!』と上着に跳び付いてエンディング。

　別に徐少強じゃなくても…と思わんでもない話だったが、彼の明るいお馬鹿な演技は其れなりに面白い。同じ『舞廰』の名前を持っていても、『The Club』とはえらく違うものだ。

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