電視風雲

呉廷燁鑑賞記：電視風雲

第二～四話（一話は鑑賞不能だった）

　香港の弱小テレビ局（自分達のATV以外モデルはありえない）にADとして勤めている方紹龍（陳錦鴻）とその仲間達は、今日も今日とてドラマの製作に追われている。リアルさの追求の為ならばいっぱいいっぱいの圧力を俳優他関係者に強いる鬼監督・霍偉良（呉廷燁）の元で、明日の大監督を目指して様々な軋轢に耐えながら。霍偉良の監督の腕は素晴らしいものだが、凝り性で予算の事は度外視するわ、俳優に対してもその厳しい態度で臨むわと兎に角周囲の人間から恐れられる存在だった。方紹龍の幼馴染で芸能記者のMoonこと張月（陳（++止）菁）はこの悪名轟く監督をネタにしてやろうと彼の周囲を嗅ぎ回り色々調査したものの、霍偉良の親友の古大豹（劉錫賢）からでたらめな話を聞かされそれを迂闊にも信じてしまった為に大恥をかかされ、意趣返しを目論んで彼の過去を洗ってみると、意外な事実が…

　四話現在では主人公は完全に霍偉良その人になっている。実に宜しい展開である。彼は前述した通りドラマの完成の為ならばなんでもする少々危険な香りのする人物として描かれているが、その実はナイーブで人に対する情けも強いという好人物？である。恐らくその暴走気味な性格が後に災いしてオープニングカットで垣間見える護送車に送り込まれる件に繋がるのだろう。それは置くとしても出番が主人公よりも遥かに多い様に見えるのは気のせいではなかろう。本作品の現時点でのメインヒロイン・張月が彼の過去を調査していくと「不良だった」「鑑別所送りさ」などと悪行が出てきて最後に「火事に巻き込まれた子供を躊躇い無く助けに行ったよ」と聞かされ彼の冷酷にして凶暴な印象が徐々に薄れてゆき、結局彼の暴走は熱意と相手を慮っての事だと分かってから彼女が殆ど何の用事も無いのに霍偉良の後を追い掛け回すようになる辺りが中々面白い。何せ彼女の追っかけの対象が呉廷燁演じる霍偉良というのが良い。
　この調子で主人公を食ってますます暴走して欲しいものである。

第五～七話

　新番組のバイオレンスドラマ『大魔頭』の製作を担当する事となった霍偉良とその部下達。だが、霍偉良と対立するテレビ局の羅偉仁（鄭恕峰）は霍偉良の考え出した配役を広告に起用すると言う名目で横取りするなど妨害工作を行い、その結果焦った霍偉良は主役をウェイターを起用したり、張月を起用したりと次から次へと奇策を弄するが結果視聴率は惨敗、売り言葉に買い言葉で「責任は俺が持つ！」とやってしまった彼には状況は悪化する一方だった。そんな中、ライバルテレビ局・紅視に勤める方紹龍の兄・方紹強（黎耀祥）が上役の游大海（周兆麟）から「制作やってみないか？」と持ち掛けられる。その時、お前の弟もこの件に関わらせようと提案された方紹強はすっかり乗り気になる。折りしも、霍偉良のドラマのお蔭でスターの階段を上り始めた周詠芝（黎思嘉）と仲良くなった方紹龍はその母親から「たかがアシスタント風情が私の娘にチョッカイ掛けるんじゃあない」と釘を刺されていただけに、兄からその話を聞いた時、彼の心は揺れるのだった…

　余りにも好い加減なドラマの主役起用の件はそんな馬鹿なと思いつつも香港じゃあるかもなーと乾いた笑いを提供してくれる。霍偉良は今回見た分でも主役そのもので、羅の妨害工作を始めとして、初っ端から暗雲が立ち込めるドラマ「大魔頭」の先行きに内心焦りながらもあくまで平静を装い、無駄に港でカッコ良く海を見詰めたりしている。…その割にすぐに姿を晦ますわ、酒によって思わず本音を方紹龍と張月に漏らすわと本来の主役である方紹龍以上にキャラクターの掘り下げが行われている。嘗て撮影時にトラブルを起こして険悪になっている方紹龍の母親に「何故大魔頭が受けないんだ」と聞きに行ったり（散々罵詈雑言の類いを受けて退散するが）、ドラマはビールみたいなもんだ（出たばっかりは良いがすぐに気が抜けて味が落ちるの意味）と評した洗面器具売りの親父・趙若愚（黄允材）に売れるドラマを作る秘訣を聞こうと店の前に陣取って仏頂面で見詰めたり（廣東十虎でもこんなのあったな）、存分に呉廷燁のキャラ振りを見せ付けてくれる。パターンではこの手の行動が実を結ぶ事なんぞはありはしないのだが、そこは最早ある種のお約束事としてみるべきなのだろう。しかし僅か数話にしてこの状態とは…彼の没落は近い。

第八～十話NEW!

　新番組を作成するに当たり、霍偉良は趙若愚を軍師として抱える事にし、更に右腕として方紹龍を選んだ。方紹龍はその事を一方的に告げられて、自分が兄に紅視で監督やらないかと誘われていると霍偉良に話すが、霍偉良はそんな話を聞く耳なんか持たず、一方的に物事を取り決めてしまう。だが、怪我の功名、主人公らのライバル放送局・紅視が上の製作会社の倒産の呷りを受けて業務停止状態の危機に陥って番組制作どころではなくなってしまったのである。結果、方紹龍の兄、方紹強らも職を失う事になってしまう。その事を受けて霍偉良は一計を案じ、自分の陣営を一気に強化して盧偉仁の力を剥奪せんと職を失った游大海達や李伯天、紅視のスター俳優周國友（袁文傑）らを抱え込んだのである。霍偉良の自分との契約破棄を盾にしたこのクーデターともいえる行動に、局の上層部は認可を与えてしまい、結果として盧偉仁の力は弱体化、彼は局を去る事になった。だが、霍偉良の強引な手法を目の当たりにした大海は自分が彼に飲まれる事に危機感を抱く…

　少々予想外。霍偉良がてっきりつぶれるかと思いきや、盧を追い落とす事に成功してしまった。大海の裏切りが発覚した事が将来の不安を残すが、ネルシャツにジーンズと言ういつもの格好から張月に見立ててもらったスーツを着て番組発表（今迄ずっとネルシャツで公的な場も通してたのかこの兄ちゃんは）したり、上層部を半ば脅迫の形で納得させたりやりたい放題である。軍師にして強運の持ち主？趙若愚を筆頭として、会社から引き抜いたマネージャー張月（今回活躍しまくり）、プロデューサーとして李伯天、紅視のスター俳優・周國友を抱き込んで時代劇（袁文傑が主演で時代劇と言うと雪花神剣を思い出す）を撮ると言う。つくづく亞洲電視の「決して叶わないけれど夢想せずにはおれない」願望がにじみ出てるドラマである。紅視の方が遥かに資本力も高くて視聴率も上というTVBをモデルにしている割りにあっさりつぶれたり一介の監督の呪いが効いたりするし、香港の人間は「何でやねん」とか突っ込み入れながら見ていただろう事は簡単に想像できる。
　他に気付いた点は、今後周國友のスタンスが大きくなるだろう事が予感できる演出が出てきたこと。周詠芝に近づき始めたのである。さらりと「僕と付き合えばイメージアップになるよ」とか、あの袁文傑が語る時点でダウト確定か？今後奴の活躍にも期待されるところである。

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