お気に入り張學友〔Jacky Cheung〕の曲

張學友の歌声には男の嘆きを代弁するかのような悲壮感が漂う。日本は勿論香港・台湾・中国の男性中国語歌手の中で彼を超える情歌の歌い手を私はいない、と信じている。彼の若干擦れた歌声が我々の心に親近感を与えるからだろうか、声の美しさでは他に沢山いるが心を動かすのはやはり彼の声なのだ。

 それ以外の張學友の魅力と言えばやっぱり映画「愛と復讐の挽歌」の太子(日本語版ではタイガーだっけか。例によって筆者は日本語版は見てません)の演技で見せる気違いっ振りやら「ハイリスク」のバカ演技、「カリー&ペッバー」の内気な青年に見られる様に非常に演技の幅が広い事が挙げられる。「愛と復讐の挽歌」シリーズの太子の演技などはどうしようもない位に怖い。ジャンキー・チョンとは言ったもんだ。その全ては彼の『眼』の演技にある。彼の「いっちゃった」演技は全て目をくわと見開いて成されているのだ。香港四大天王(この呼び名ももう使われないな)の中で一番演技派だと私は思うのだが…新作が待たれる。「アンナ・マデリーナ」の警官役なんてどうでも良い。カムバック、ジャンキー・チョン!(おい

普通話

『忘記ィ尓我做不到』4:54

同名のアルバムのタイトル曲。私が中文歌曲に嵌る切っ掛けになった歌。張學友というより、典型的中文バラードの佳作。この曲の歌詞を始めて読んだ時、『中国語の歌は二番もへったくれも無く漢詩をきりの良いところでリピートしているのか』と変な所で感心した覚えがある。サビの部分『忘記(イ尓)我做不到 不去天涯海角 〜 如果愛是痛苦的泥沼 譲我們一起逃…』は都合三度歌われるが三度目のそれがこらえ様も無い搾り出すような感情が篭っていて非常に胸を打つ。歌の意味は去ってしまった恋人を想い嘆く歌。中国語ならではの『不去天涯海角(何処へも行かないで)』等の大仰な表現がしっくりくる。この曲を聞き出してから数日後、日本から私の失恋を告げる手紙が届いて何ともやりきれなくなったせいもあるのだろう。張學友と言えば他にも『一千個傷心的理由』『心砕了無痕』『相信(女也)、關心(女也)』といった心の琴線を刺激する普通話の名曲が多数存在するがこの曲が私にとってはやはり思い入れのせいもあり一番のお気に入りである。

『一千個傷心的理由』4:35

 精選集「真愛」「三年両語」に収録。ピアノのイントロから入る秀逸なバラード。割りとピアノ弾きの人にはやりやすい曲なのか、中国で何度かこの曲の生演奏を耳にした事がある。學友の歌をあんまり聞かん友人にもこの歌は良いと言わしめた。この歌でサビになる「一千個傷心的理由」だが、一つの恋愛関係が終わるに当って、本当に一千個もの傷付く理由があったならばそんなもん別れてしまえというのが至極当然の論理である。勿論この表現は中国人お得意の「白髪三千丈」と同軸に扱われるものである事は皆様よおく判っているものと察するが、この歌を和訳するに当ってはやはり「一千個もの」としなければなんかしっくり来ない。「沢山の」では何か座りが悪いのだ。そう云えばこの歌の収録された「三年両語」は日本版が出ているので入手は比較的楽であろう。こんな事を書いてはいるが兎に角一度は聞いてみなさいって。カラオケでも歌いやすいので定番と言えば定番の一曲でもある。


粤語

『離開以後』4:02

アルバム『過敏世界』収録。中国大陸版ではこのアルバム名が『離開以後』となっており、そのタイトル曲に。その理由は『過敏世界』の歌の内容が情報規制の激しい中共のやり方に文句を付けているとしか思えない為に削られた結果(あの国はこんな事ばっかやってるからなあ)だろう。澳語の曲はその発音上普通話よりもアップテンポに向いているとまあ、中文歌曲が好きな人間の殆どが思っているがこの曲もぽんぽんぽんと漢字を発音してくれる。お陰で過去私は澳語の歌が『んごんごほいほい』と聞こえて仕方が無かったのであるが馴れと云うものは恐ろしいもので、今では殆ど喋る事が出来ない割には歌えるようにはなった。やはりサビの部分である『離開我以後 我會習慣自卑 〜 夢中方可永久地接近(イ尓)! Wooh…Wooh…』の辺りが素晴らしい。曲の内容はというと、別れを予感した男が別れてからの自分の様を予想して嘆くと言うもの。ビデオクリップは別れる前の二人の楽しかった日々と云うイメージで展開されており、相手役の女性は日本でも有名な陳慧琳Kelly Chanが演じている。当然落ちでは學友が一人苦しむ姿を見せるのであるが。

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