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マーケティング・マインド

「マーケティング」にはさまざまな定義があります。手元の辞書には「商品販売やサービスを円滑に行うための、市場調査・販売促進・宣伝広告などの企業活動」と書かれています。マーケティング研究の第1人者のフィリップ・コトラーは「マーケティングとは、顧客のニーズ、欲求を満たすために、交換過程を通じてなされる人間の諸活動である」といっています。最近は「マーケティングは売れる仕組みづくり」ともいわれています。私は「顧客のニーズを見つけ、それを提供する顧客満足活動」と考えています。
1980年代の後半頃から顧客満足といわれているのですが、いまだに売り手の都合で商品を販売したり、顧客にいかに商品を買わせるかなどの販売活動がおこなわれているのが現状です。

私は、マーケティングを大きく2つに分けて考えてみたいと思います。1つは、生産や販売などの活動において用いられる分析ツールや4P*(マーケティング・ミックス)などの手法や技術の部分。もう1つは、顧客起点で顧客のニーズを理解し真の満足を提供しようとする理念やこころの部分です。前者をマーケティング・テクニック、後者をマーケティング・マインドと呼ぶことができます。
多くの人たちは、このマーケティング・テクニックだけで顧客の心をつかみ、商品が売れると錯覚をしているように思えます。まるで、「女性の心のつかみ方」のハウツウ本を読めば、明日から女性にモテル男性になると錯覚をしているのと同じです。人の心をつかむことは、そんなに簡単なことではありません。しかし、難しく考えることもありません。常にお客様に注意を払い、お客様のニーズを把握し、提供し、満足してもらおう喜んでもらおうとする気持ち=マーケティング・マインドがあればいいのです。まさに男女の関係に似ています。

マーケティング マーケティング・マインド
マーケティング・テクニック

近所のスーパー(イズミヤさんではありません)へ買物に行くと、少し疲れたような顔をして、一生懸命商品を陳列棚に並べている店員さんを見かけます。しかも、買物の邪魔になっていることにまったく気がついていません。マニュアルには「笑顔で商品を陳列棚に並べる」とは書かれていないのでしょう。また、仕事に夢中で周りをみる余裕もないのでしょう。これがいけないというわけではありません。むしろ、不景気な時代、いろいろと大変だろうなと共感する気持ちになります。しかし、もしその店員さんが、笑顔で作業をし、明るく挨拶し、仕事を止めて場所を空けてくれたらどんなにすばらしいことでしょう。お客様に気分良く買物をしてもらうために、自らの意志で、注意を払い、笑顔で接し、明るく挨拶し対応する。この行動、この価値観こそがマーケティング・マインドだと思います。

多くの企業が「顧客満足」を方針や理念に取りあげていますが、きちんと実行されている企業はそう多くはありません。例えば、レジに並んだお客様が待ち時間にイライラしているのに、近くで休憩している店員さんがいたり、お客様が両手に商品を一杯持って買物をしているのに、誰もカゴを渡そうとしなかったり、お客様に商品の説明を求められて十分に答えられなかったり、快適な買物をしていただくために、すべきことまだまだが沢山あります。
では、なぜ顧客満足が実践されないのか?その理由の1つに、お客様にサービスすべき店員さんが、職場に対して満足していないことがあげられます。職場の上司や経営者は、「お客様を大切に!」「お客様は神様だ!」など従業員に顧客満足度を高めるように指示を出しますが、従業員本人が満足していないのに、お客様のことを考えて対応できるものではありません。本当に、顧客満足度を高めようと考えているのなら、現場でお客様に対応する店員さんが気持ちよく働ける環境を整えることがまず先決でしょう。顧客満足の前に従業員満足を考える。これが、上司や経営者の役割であり、この発想がマーケティング・マインドと言えます。

今、米国では多く企業が「EAP**(Employee Assistance Program)=社員支援プログラム」を導入しています。「EAP」は、従業員が抱えるさまざまな問題を解決するためのプログラムで、対人関係などの職場の問題、相続や離婚などの家庭の問題、また投資の問題まで従業員が抱えるさまざまな問題に、カウンセラー、コンサルタント、税理士、弁護士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家が対応してくれるのです。米国ではフォーチュン誌に掲載されたトップ企業500社の内、95%が導入しているのです。その結果、従業員の離職を防ぎ、熟練度が増し、やる気を出し、生産性の向上、顧客満足度の向上につながっているのです。

今、日本企業は従業員のリストラで一生懸命ですが、かつて、日本企業が行ってきた従業員の企業への定着を、米国企業が行って効果を出しているのです。
従業員満足が、顧客満足を向上し、収益を生む、実は、従業員満足は重要なことなのです。 
 日本の企業は、今一度、これから何をしなければならないのか、マーケティング・マインドで考え直す必要があるように思います。


*<マーケティング・ミックス=4P>
「4Pとは、製品政策(Production)、価格戦政策(Price)、販売促進政策(Promotion)、流通経路政策(Place)をさし、これらの最適な組み合わせをマーケティング・ミックスといいます」

**<EAP>
「1940年代アメリカで、働き盛りの社員がアルコール中毒で休職者や退職者などが増え社会問題となりました。そこで、本人、家族、企業にとって、早期治療したほうがメリットは大きいという認識から、できたのがEAPです」

2003/8/3


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