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大阪販売士協会 会報紙「大阪販売士」第86号より

売れない時代の感性マーケティング(5)
−顧客ニーズのつかみ方−

     (有)ニーズ創造研究所 代表取締役/マーケティングプランナー 植田 真司

  我々は、顧客のニーズをつかもうと、売れている商品を分析したり、顧客にアンケート調査をしたり、さまざまな試みをしています。しかし、顧客のニーズを見つけ出すことは容易でありません。その理由は、我々の問題意識の持ち方や調査方法にあるようです。

  例えば、数年前マッキントッシュ(通称マック)は、赤・青・橙・緑・紫の5種類の色のパソコンを市場に出し、大ヒットになりました。どうして、他のメーカーは、いろいろな色のパソコンが売れると気付かなかったのでしょうか? その理由は、調査の質問方法に問題があったといえます。例えば、顧客に「パソコンは、何色がお好きですか?」と質問をすると、「白」「グレー」といった答えが返ってくるのです。これは、顧客の頭の中には「パソコンを使う場所はオフィースである」というイメージがあり、自然とオフィースにふさわしい色を選んでしまうのです。

  そこで質問に具体的な場所を入れて、「子供部屋で使うパソコンは、何色がお好きですか?」と質問するとどうでしょう。「赤」「青」「黄」の答えが多く返ってきます。「和室で使うパソコンは、何色がお好きですか?」と質問すると、「緑」「白」が多く返ってきます。マッキントッシュではオフィース以外でもパソコンを使うニーズがあるという発想のもとで調査をし、カラー展開を実施したのでしょう。このように、顧客は、いつ、どこで、誰と、どのような状況で使用するのかなど、具体的なイメージができないと、正確に答えてくれないのです。

  もう一つ、顧客がアンケート調査に間違った解答をする例を紹介しましょう。世界で最初にネスカフェが(味は同じですばやくできる)インスタントコーヒーを発売したとき、おもったように売れなかったそうです。そこで調査をすると、「インスタントは美味しくない」という答えが返ってきました。ところが、目隠しテストで、豆を挽いたコーヒーとインスタントコーヒーの飲み比べをすると同じなのです。おかしな話です。
  実は、別の調査でわかったのですが、美味しくない理由はインスタントコーヒーそのものでなく、インスタントコーヒーのイメージにあったのです。インスタントコーヒーの特徴は、「朝、さっと飲んで出かける」という手っ取り早さと能率性でした。このイメージが、「手抜きする悪い主婦
インスタントコーヒーは良くない インスタントコーヒーは美味しくない」と連想されたのです。そこでネスカフェでは、インスタントコーヒーを購入するのは、最高の品質を求める女性であり、「手抜き主婦」ではなく「賢い主婦」であると訴えかけ、味を変えるのではなく、イメージを変えて販売を伸ばしたのです。

  これら二つの例から分かるように、調査や質問の方法や解釈を間違えると、顧客のニーズや問題点の発見にはいたりません。今までいろんな調査したが役に立たなかったといわれる方は、調査の方法に問題があったのではないでしょうか?

  ここで、顧客ニーズを発見するコツをお教えしましょう。これは、実務家と学者の考え方の違いです。実務家は、モノが売れないときに「どうして売ろうか」と、売る立場で考えます。これに対し学者は、「なぜ売れないのだろう」と、顧客の立場で考えます。先ほどの、インスタントコーヒーを例にすると、実務家は、売ることしか頭になく、問題の本質には気付きません。学者は、顧客のニーズがどこにあるのか考えていきます。ネスカフェの場合も顧客ニーズがインスタントコーヒーのイメージにあることに気付いたのは、メイゾン・ヘアーという深層心理学者です。学者がこのように、いろんな角度から冷静に考えられるのは、目先の利益や目標などに縛られていないからです。

顧客の真のニーズをつかむには、目先に捕われない学者の考え方を適度に持つことです。

2001/12/31


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