向きを持った量

   測定することが出来るものを量と呼ぼう。この量には向きを持ったものと持たないものがある。向きを持っている量をベクトル、持たない方の量をスカラーという。物理で扱う量はベクトルが多い。方向と大きさを持つので矢印で表すのが便利である。
   力もベクトルである。左の図で、赤い矢印で表しているのが力である。一目で右向きにはたらいているというのがわかるだろう。また、(B)のほうがほぼ2倍も大きい力だというのが矢の長さを比べればわかる。



   このほかのベクトル量はいろいろあるが最初に出てくる基本的なものを少しだけ上げておこう。
加速度、速度、変位、力、重力、運動量などだ。これにたいして、時間、温度、体重、水の量、面積、体積、距離、などは方向に関係がないのでスカラー量だ。
   ベクトル量であっても方向を考える必要のない場合がある。例えば重力について考えると、向きは確かに下向きなんだけど、向きなんかどうでもよいときは「重力の大きさ」といわねばならない。少し長いので普通、短縮する。ほら、メールアドレスをメアドというように。というわけで「力の大き」の場合、最初の「重」と最後の「さ」をとって「重さ」という。
   速度だってそうだ。速度の大きさを省略すれば「速さ」ということになる。これは「ソクサ」とよむんじゃなくて「ハヤサ」と読むということは知ってるね。だから、「速度」と「速さ」はちがうんだってことわかるかな。



   10m/sで流れている川を直角に横切る船を考えてみよう。この船は流れのないところなら10m/sで進む能力を持っている。川の流れに乗っているため10m/sの速度を持ち、自分自身でも10m/sの速度を出す。あわせて20m/sの速度になるだろうか?速度の向きが違うのでそうはならない。 つまり、向きを持つ量の足し算は単純にはいかないことがわかる。
   その様子を見てみよう。下のボタンを押せばそれぞれの運動が見える。





   赤い色で示した船が川に流されながら自分自身も動くときの様子だ。そのスピード(速さ)は、いくらになるだろうか。左図を参考に次から選んでみよう。

   左図を見ると直角三角形ができていることがわかる。 この三角形は辺の比率も1:1:√2だから、割合からいけば約14.1ということになる。 つまり、10+10が20ではなく、14.1になったのだ。方向も計算されたことになる。 これがベクトルの足し算だ。基本は2つの速度を2辺とする平行四辺形を描き、対角線の長さを求めるようにすればよい。
   このように、速度というのはいくつかの速度が合わさってできていると考えればよい。2つでも3つでも合わさって1つになっている。だから、逆に1つの速度をいくつかの速度に分けて考えることも可能だ。

   飛行機が30°の角度で離陸しようとしている。
こんな場合も、鉛直方向と水平方向に分けてやれば便利なことが多い。たとえば、次のような問題を考えてみよう。   100m/sの速度を2つに分けるのだ。ヒントが欲しい場合はマウスを図上に持って行くこと。
問1
100m/sの速さで飛ぶ飛行機がこのままの角度で上昇していったとすると100mの高度に達するのは何秒後か。


   速さだけがベクトルではない。方向を持つ量はすべてベクトルなのである。もちろん力もそうだ。力の足し算を考えてみよう。例えば、左の図を見ると今まさに弓矢が飛び立とうとしている。弦から2方向に張力が100Nずつはたらいているが、合計はいくらになるだろうか。100+100=200ではない。平行四辺形を描くということから考えてみよう。ヒント;マウスを図にのせて正三角形を探してみよ。
   方向はすぐわかる。なぜなら、弓矢がどちらに飛び立つのか考えればよい。大きさの方はいくらになるだろうか。ちょっと考えてみて欲しい。
□に数値を入れて判定ボタンを押してみよ。
N


ー変位ー

   力とか速度とかはまだ、方向を考えろといわれてもわかりやすい。最初の頃わかりづらいのは変位だろう。といっても別段難しいわけではない。変位について少し触れておこう。変位は距離と少し似たところがあるので距離との違いを指摘しながら説明してみよう。


   無人島に一本の椰子の木が生えているが実がポロッと落ちてどこかへ流れていった。漂流してこの島にたどり着いた人には一個の椰子の実は貴重だ。天の神に成り変わり教えてあげて欲しい。次のいずれかのボタンを押してみよう。






   どうだろうか、距離と似ているが、距離はスカラー量で変位は方向を持つベクトルなのだ。だから矢印で表すことができる。変位と距離の違いは人によっては死活問題となることがわかっただろう。
   あと、距離と変位の違いについて、2,3の例をあげておこう。
   左の図はビルの屋上から真上に向けて物体を投げ上げたところである。A→B→C→Dの順に飛んでいった。このとき、屋上を高さの基準にとると、
*3秒後までに移動した距離は150m
*3秒後の変位は上方50m(または+50m)

*5秒後までに移動した距離は200m
*5秒後の変位は0

*6秒後までに移動した距離は220m
*6秒後の変位は下方20m(または−20m)

   にゃんこが楽しそうに、A→B→Cの順に全力疾走だ。AB間が40m、BC間が30mで曲がり角Bは直角に折れいている。Cについたとき、


にゃんこが走った距離は70m
にゃんこの変位は?答は図にマウスをのせてみてね。