重力だけがはたらく場合の運動
重力は見えない。なのに何故あるってわかるのだろう。力がはたらいているかどうかは物体の速度が変わるかどうかでわかるのである。力がはたらけばその力の方向に速度が増加する。たとえば物体を空中で放してみよう。
物体に力が加わらないよう、そっと落としてみよう。このように初速度0で落下することを自由落下という。

下向きに速度が増加していることから力がはたらいているとわかるのである。

重力がはたらいていない状況を考えてみよう、

そ〜ら、いつまで経っても落ちないじゃないか。重力がないとすると無理に下向きに投げてやった場合はどうなるだろうか

下向きに移動はするけれどスピードは増えない。だから、下向きにスピードが増えるということはその方向に力がはたらいているということなのである。このように見えない力は物体の運動状態から推察するのである。
地球上、地上付近ではあらゆる物体に重力がはたらく。それは物体がどのような状況にあってもなんら例外なくはたらくのである。その結果、もし重力しかはたらかないのであれば、鉛直下向きに9.8m/s2の加速度を 生じることになる。つまり、1秒間あたり下向きに速度が9.8m/s増えるということだ。
下に示す、4つの場合はいずれも重力しかはたらかない場合である。マウスを図にのせれば重力があらわれる。空気の抵抗力などは無いものとして考えると重力しかはたらいていないのがわかるだろうか。つい、無いはずの力を考えてしまう人がいるのではないか?
このように、重力だけがはたらいて起こる運動を落下運動という。だから物体が上昇している場合も落下運動なのである。



でも、どうしても下に投げ下ろしたり、上に投げた場合など、力がはたらいていると錯覚してしまう人が多い。その辺のところを少し考えてみよう。



下に投げ下ろされた物体
少し極端な例だが、高いところからピストルを下方に向けて発射したとしよう。大きな力で発射された弾だが銃口を出た瞬間から重力しかはたらかなくなる。だから400m/sの初速度で発射されても、1秒間に増える速度は決まっている。


1後の速度は9.8m/s増えて409.8m/sなのである。




上昇する物体

え〜っ、と思うかも知れないが、下向きに速度が増加しているだけのことである。じっくりと順を追って見てみよう。
初速度39.2m/sで投げ上げたとしよう。

重力がはたらけば1秒間に9.8m/sずつ下向きに速度が増える。




ほれみなさい。物体がどのような動きをしていようと、1秒間に9.8m/sずつ下向きに速度が増えている。ただそれだけのことなのである。


今度は高いところから水平方向に物体を投げ出し場合を考えてみよう。この場合も重力しかはたらいていないので「1秒間に9.8m/sづつ下向きに速度が増える」ということ以外何も起こらない。このような運動は水平投射などといかめしい名前で呼ばれたりする。



水平投射
どんな動きをするか予想できるだろうがとにかく投げてみよう。

ほお〜、放物線を描くのだねえ。今度は、 重力がないものだとして、10m/sで投げてみよう。

当然、下には落ちない。横向きの速度を変える力もないから等速運動である。
しかし、地球には重力があるのだから再び、重力を発生させてみよう。

やはり「1秒間に9.8m/sづつ下向きに速度が増える」ということ以外何も起こっていないことがわかるだろう。
単に落下しているに過ぎないということを確かめるために電車の車内からこの運動を観察してみよう。

電車を物体と同じ速さの10m/sで右方向に走らせてみよう。

いや〜、やはり単なる落下だったんだね。このときの物体と電車の位置関係を確認しておこう。




今度は電車内で物体を落としてみよう。速く走っている電車であっても一定のスピードであるならば落とされた物体はまっすぐ自分の足下に落ちるはずだ。

ほらね。このとき電車の外にいる人がこの物体の動きを見ていたとしたら、どのようにみえるだろうか。


ほら、放物線を描くことになるのがわかっただろうか。わかりにくければ物体の通った位置を残してみよう。

水平投射といわれる動きは落下運動であることがわかっただろう。




斜方投射


斜め上に投げあげることである。このときも運動中は重力しか働かないので落下しているに過ぎない。
今度は初速度が斜め上を向いている。それだけのことである。

モーションが変だがネコがものを投げること自体変なのであるから気にしない。この動きは鉛直上向きの投げ上げである。ただ、右方向に動きながら投げあげられているに過ぎない。ふたたび、電車内での動きを考え理解してみよう。

まずは車内にいる人が真上に投げあげられた物体を観察している場合を考えてみよう。

このように単に上がって下がるだけだ。 しかし、電車の外にいる人がこの動きを見ればどうなるだろうか。物体は上下運動の他に電車と共に右方向にも動いていることになる。

ほら、放物線を描くことになるのがわかっただろうか。わかりにくければ物体の通った位置を残してみよう。

斜方投射といわれる動きも単なる落下運動であることがわかただろう。




重力しかはたらいていない。
結局、初速度が違うだけで、重力しかはたらいていないのですべて落下運動なのだ。こういったことを知るのが理解するということだ。しかし、どうしても動いているとその方向に力がはたらいていると思ってしまう。このあたりのことをピッチャーがボールを投げるときのことを例にとってよく考えてみることにしよう。ピッチャー、第1球のモーションにはいりました。投げた!

ボールを放す瞬間まで手とボールが接触している。だから、手からボールに力がはたらいている。

でも離れた瞬間、手から力がはたらくはずはないでしょ! 離れていてもはたらくことのできる力は、重力や、電気、磁石の力です。こんな状況で力をはたらかせることができるなら、まさにハンドパワー、超能力者だね。その点重力はすごい。触れてないのにはたらくから

このように投げられたボールは放物線を描く。





最初の頃の、力学の範囲では空間的に離れていてもはたらく力は重力だけだと思っていい。逆に、接触しているときは、触れているものから必ず力がはたらくということも知っておこう。ここで、力についてたいへん重要なことをまとめておく。
@重力は必ずはたらく。
A触れているものからは必ず力がはたらく。



モンキーハンティング
モンキーハンティングと呼ばれる逸話がある。ハンターが遠くの崖に生える木の枝にぶら下がったサルを撃とうとしている。銃口は水平にサルに照準を合わせている。サルはハンターが撃った瞬間に手を放せば絶対弾は当たらないと考えているが、さあ、結果はどうなるのだろうか。

あちゃー、手を放さなければ大丈夫だったのに、当たってしまったのでした。考えてみれば当たり前のことで銃弾が発射された瞬間から落下が始まっている。同じ時刻に落下を始めればいつまで経っても両者は同じ高さとなる。

銃弾が下に落ちればヘナヘナとなった印象があるが、それは全くの錯覚である。右方向の速さは銃口を出たときの速さのままである。




もう一つのモンキーハンティング
水平方向に銃を構えている場合は理解しやすいが、斜め上に向けている場合はどうなるだろうか。

やはり、このように当たってしまうのである。なにせ、サルと弾丸はともに重力だけを受けた運動をするからだ。両者ともに落下しているだけなのだ。


このように弾丸は常に最初の目標通りの方向を向いている。ともに重力がはたらき、同じ加速度で落下しているからこうなるのだ。サルから見れば、つねに同じ方向に弾丸が見え、しかも弾丸と自分との距離が縮まってくることになる。





結局、落下運動は複雑な動きを見せていても単純な落下と初速度がある場合はこれを考慮するだけでよい。しかも落下は直線的であり、加速度も9.8m/s2と決まっているので等加速度直線運動の式がそのまま、使えるのである。



練習問題
ある高さのビルがある。このビルの屋上からボールをそっと落とせば5秒で地面に着くことがわかった。いま、10m/sの速さで水平方向にボールを投げ出した。
@水平方向に投げ出されたボールが地面に着くまで何秒かかるか。
 



A物体は何m先まで届くか。