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メンタルトレーニング  シリーズ5

学習への活用

   ここでは、メンタルトレーニングの学習における活用方法を紹介しましょう。学校の成績に悩んでいる人や、受験勉強している人には必読の内容です。メンタルトレーニングを活用すると「やる気が高まる」「集中力が向上する」「記憶力がアップする」「頭の回転がよくなる」などの効果が期待できます。学習する前に、リラックスし気持ちを落ち着けることで記憶力や集中力がアップするといわれています。これを活用した学習の方法に『高速学習』や『速読』などがあります。この『高速学習』『速読』と、その他有効な学習方法をいくつか紹介しましょう。

『高速学習』について
  『高速学習』は一般的に「サジェスト・ペディア」「スーパー・ラーニング」といわれており、記憶力を向上させる学習方法です。特に語学の学習に活用されています。「サジェスト・ペディア(暗示学習法)」はブルガリアのロザノフ博士により開発されたもので、それがアメリカでは「スーパー・ラーニング」として普及しています。基本は、「不安や緊張のない状態で集中力を高め、楽しく学ぶ」「学習の全過程を通じて、学習者の顕在意識と潜在意識を活用する」などです。簡単にその方法を説明しましょう。
   椅子に深く座り楽な姿勢で、ゆっくり深呼吸し、心の緊張をほぐし、心と体をリラックスさせ、頭をスッキリさせた状態をつくります。この状態で学習に取りかかります。バロック音楽をバックミュージックに、記憶すべき言葉や単語を吹き込んだテープを数回聞きます。最初はテキストを目で追いながら、次は目を閉じて・・・。テープには、強・中・弱の調子をつけた声が録音されています。これは、単調なリズムだと集中力が低下するため、あえて変化を与えてあります。また、バックに音楽をかけるのは頭をリラックスさせるためです。心と体がリラックスすると、顕在意識と潜在意識のあいだの扉が開き、潜在意識のなかに長期記憶として入っていきます。自然にその内容が頭のなかに記憶されるわけです。
 学校の勉強ではあまりパッとしない人が、趣味の世界になると驚くほどよく知っていて、その記憶力に感心させられることがしばしばあります。我々は、好きなことをやっているときは、集中してすばらしい能力を発揮します。また、趣味に没頭している時は、疲れを感じることもなく、時間を忘れてしまうほどです。この状態が上記で述べた「リラックスしながら集中している状態」です。
   反対に、「心とからだが少し緊張し、集中している」状態があります。これは、一夜漬けなどで、ただガムシャに丸暗記しようとしているときがこの状態です。このときは、記憶は顕在意識の領域だけにとどまり短期記憶として記憶されるため、時間が経つとすぐに忘れてしまいます。学習のときにリラックスしているかどうかが、長期記憶と短期記憶の違いになるわけです。

『速読』について
   『速読』は、目を動かすトレーニングと、文字を集団で絵のように読み取るトレーニングで成り立っています。トレーニングをつんだ人は、1分間に10000文字以上を読むといわれています。(我々の一般的な速さは、1分間に400〜600文字といわれています)本の1ページがだいたい400〜500文字ですから1分間に20ページ以上読むことになります。どのようにしてこのような速さで読み取ることがでるのでしょうか?
 通常我々は、文字を1文字づつ読んでいます。しかし、トレーニングすると1文字づつでなく、2行または数行を一度に読み取ることができます。中には1ページ全部を一度に読み取ってしまう人がいます。我々の潜在能力にはこのように一度にいくつもの文字を読み取り、文をつなぎあわせて理解する能力があるのです。ポイントは、リラックスと集中力です。一般的には左脳で文字を理解しながら読むのですが、『速読』では右脳で絵をみる感覚で読みます。
 ここで、文字の理解力とともにトレーニングしなければいけないのが目の「眼球運動」と「視野の拡大」です。我々は普段から、1点をゆっくりと移動しながら文字を読んでいますから、『速読』のように速い目の動きや、広い範囲の文字を一度に捕らえたりすることができないのです。ですから、初心者のトレーニングは理解力の前に、目の速い動きと視野の拡大のトレーニングからスタートします。
   あなたは、1分間に10000字なんて無理だと思っているのではないでしょうか? 無理だと考えることが、あなたの能力の発揮を妨害しているのです。

その他の方法については下記に列記しておきました。

1、願望となる目標をもつ。
   勉強をするとき、目的または目標が無いとどのように勉強をしてよいのかわかりません。英語をものにしたいときは、どのようにマスターしたいのか、その目標達成時のようすをイメージする必要があります。例えば、有名な外国のスターと友達になって、楽しい会話をしているところをイメージすると、目標が明確になり、やる気もでてきます。目標を設定する時に注意することは、「テストで○○点取る」「××大学に合格する」というような自分でコントロールできない目標より、「英単語を△△△個覚える」など自分の力で達成できる目標を設定することです。「テストでよい点を取る」「大学に合格する」は当然の目標でもありますから。

2、学習の計画を立てる。
 スポーツやビジネス同様、願望達成までの計画が重要です。計画がないとただの夢で終わってしまいます。計画を立てることで夢が達成可能な目標に変わります。
   目標や計画を立てるときに注意することは、自分の得意・不得意、現在の能力・性格などを十分知ったうえで、いつ目標を達成するのかを決めることです。

3、学習の前のリラックス。
   リラックスすると、気持ちが落ち着き、気分が切り替わり、集中力がアップします。ある塾では授業に入るときに、休み時間のざわざわした状態からすぐ授業に入るのでなく、一旦ある音を聞かせ、その音に集中することで気持ちを切り換えます。休み時間に話した内容が頭の中に残っているようでは、授業に集中できないからです。また、気持ちや脈が乱れていると脳への血のめぐりも悪く、頭が働きません。必ず、心を落ち着かせて、集中力を高めて学習にとり組んでいます。その他、クラシック音楽を聴いたり、呼吸法(深呼吸)、メディテーション(瞑想)、集中して勉強しているところをイメージするなどの方法があります。

4、よい目覚めで、気分がすっきり。
   スポーツの場合、試合のときだけでなく普段から体調を整えることが大切です。学習の場合も同様、普段から体調を整える必要があります。いくら勉強時間を増やして頑張っても、睡眠不足の状態では学んだことが頭に入らず、勉強の効率が悪くなり、時間の無駄使いになってしまいます。その為に、普段から睡眠不足に気を付け、深い眠りと、よい目覚めを心がけ、常に頭をすっきりさせていることです。夜寝る前と朝起きたときに楽しいことをイメージし、心の不安や緊張を取り除きましょう。

5、プラス思考で自分を信じる。
 例えば、突然外国の人に英語で話しかけられたとき、「どうしよう」「困ったな」とマイナス思考になると、それだけで緊張し、普段理解できるような簡単な言葉がが聞き取れなくなります。苦手意識が緊張をよび、本来の能力が発揮出来なくなるのです。プラス思考で「ネイティブ(現地)の人と話しができるなんてラッキー」と思えればしめたものです。
 試験のときも同様、自分に自信をもてば普段の能力が発揮できるのです。    

6、自分に暗示をかけて、潜在能力を活用する。
   人間には本来、自分が思っている以上の能力(記憶力、創造力)があります。しかし、過去の経験や常識によって、「ダメだ」「出来ない」と自分に暗示をかけています。我々の回りには、能力を発揮させる暗示より、能力の発揮を妨げる暗示であふれています。これらのマイナスの暗示により、自分に限界をつくっているのです。このような限界を「抗暗示障壁(こうあんじしょうへき)」といって、能力開発の一番の障害になっています。
 自分には「できる」というプラスの暗示が最も重要です。ここで潜在能力のすばらしさを説明しましょう。『カクテルパーティー効果』というものがあります。これは、パーティー会場などで会話に夢中になり、まわりの会話に注意がいかないときでも、自分の名前が呼ばれると、その声に気づくというものです。我々は、不必要な声は聞こえてないが、自分に必要な声は聞こえるようにできているのです。実は潜在意識がすべての会話を聴いていて、必要なときに必要な会話だけを顕在意識に送っているのです。

7、子供のように素直な心になる。
   子供のように素直な心になると、おのずと心と体がリラックスし、学習に対する好奇心も高まり、肯定的な暗示が受け入れやすくなります。子供のように興味を持って学習すると、記憶力は高まるでしょう。

8、左右の脳を使う。
   一般に、「左脳」は言葉や文字の学習に使われ、「右脳」はリズムやイメージの学習に使われます。記憶学習では基本的に左脳が主役になって右脳はほとんど使われていません。しかし、この左脳と右脳を統合することでさらに高い学習効果が得られます。記憶のときには、「左脳」の言葉や文字だけでなく、「右脳」のイメージ、リズム、イントネーションを活用することが重要になります。  

9、五感を使う。
   自分の声を再度聴くことで記憶力がアップします。セルフトーク(自分に話しかけるテクニック)で、覚えようとするものを、目で見て、声に出し、耳で聞き、手で書くことです。「文字を目でみる」「その文字を声に出す」「その声を耳で聞く」「その文字を手で書く」この4つの感覚を一度に使うことにより記憶力がさらにアップします。

10、聴覚を刺激することで語学が上達する。
   聴覚を刺激することで語学力がアップするという『トマティスメソッド』という方法があります。これは、学びたい国の言葉に近い音域をもった曲、英語ではモーツァルトやグレゴリオ・チャント(聖歌)を聴くことで、ヒアリング能力が上達するというものです。英語と日本語では発音の音域が違います、英語は2000ヘルツ以上、日本語は1500ヘルツ以下といわれています。そのために、日本人の聴覚は2000ヘルツ以上の音域が聴き取りにくくなっています。ですから、英語の音域である2000ヘルツ以上の音や音楽を聴くことで、英語が正確に聞き取れるようになり、語学も上達するのです。

11、速聴で頭の回転がよくなる。
 音声を聴いた場合、耳から入った音声は、大脳の言語領域にある『ウエルニッケ中枢』で追唱(聴いたり読んだことを、もう一度頭のなかで唱えること)し、理解し、整理し、脳の別の領域に送り込む作業を無意識で行っています。「頭がよい」「頭が切れる」というのは、この『ウエルニッケ中枢』が発達しているためといえます。これを鍛えることでいわゆる頭の回転(理解力)がアップします。
   では、どのように鍛えるのか? その方法は、普段聴かないような速さの言葉を聴くことです。速聴することで中枢は何とかそのスピードに合わせようと追唱速度を速くします。速いスピードに慣れた中枢は普通のスピードを遅く感じます。そうすることで頭の回転がよくなるのです。
   ちょうど。高速道路から一般道路に降り、車のスピードを減速した時に、普段より遅く感じるのに似ています。

   以上のように、こころのもち方と、開発されていない潜在能力の活用であなたの能力がさらにアップするのです。                 

2001/7/1


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