R.A. Salvatoreのページ、続き

 アイスウィンド三部作が総集編で再販されたり、TSR絡みではなく他作品(中には某メジャー物もあるとか)でも小説家として活躍してますな。TSR絡みでメジャーな作家と言えばあとフリッツ・ライバーの名前がありますが、彼くらいにはなって欲しいものです。そういや、ライバーの『ファファード&グレイマウザー』の続きはもう日本で出ないのかしらん。もうかれこれ二十年続きが出版されていないぞおい。

作品紹介

Siege of Darkness

 あの第一版AD&Dプレーヤーを絶望させた?悪名高いレルム世界の世界破壊プロジェクト・タイムオブトラブルの時期に発生した、ドリスト達とDrow軍団との最大最後の決戦を描いている。度重なる失態に自らの進退を危ぶんだビーンラー家のマトロンマザーは、遂にミスリルホールへと闇黒都市メンゾベランザンの主要な貴族の戦力を結集し侵攻する事を決意する。そして其の頃、件の世界的破壊が正に進行していた。其の為、Drowもドリスト達も魔法の助けが覚束無いという不自由極まりない中での戦いを強いられる事になった。ドリスト達は必死の思いで彼らの進行を食い止めるべく、嘗ての知り合い(シルベリームーンのアラストリールやハークル・ハーペル、そしてエルク族のバーバリアン達)を文字通り掻き集め、闇黒の軍団に立ち向かう。嘗てない密度で高レベルキャラクター同士のバトルの火蓋が切って落とされようとしていた…。

 ダブルネームレベルキャラクター(18+レベルキャラクターの事)がここまで一度に結集して戦いを繰り広げる話は私の知る限りこの話しかない。言い方を変えると、ここまで豪華なメンバーを持ってせねばメンゾベランザンのDrowは強力であるという事に他ならない。メンゾベランザンのAD&Dサプリメント・ボックスセットを所持している御仁はその中で極悪なNPC(最早ルールは完全度外視しているに等しい)を何人もご覧になっているものと思うが、其の内の殆どがこの小説では出番を貰っている。例えば第二家バリソンデルアームゴの戦士長であるウスジェンタル(fig20)、前作で兄ダントラグが死んだ為新たに第一家ビーンラーの戦士長になったベルギニオン(不明、しかし確実に15lV+のfighter)に長兄グロムフ(Mu18)、Psi持ちの第四家オブロドラのマトロンマザー(C9/Psi15)といった猛者達の姿を垣間見る事が出来る。そして忘れてはならないのがタイムオブトラブルのせいで「蜘蛛の女神」ルロスがメンゾベランザンにやって来たことだろう。彼女はかの大事件を「A time of great strife」と呼び、また「A time when the gods will pay for their foolishness」とも形容する。彼女はこの事態に対して、Avatarシリーズでの神々のうろたえ様とは全く対照的に従容としている。この辺が他のくたばった神々と違って非常にカリスマ溢れる存在である事を示している。とてもHP66の神様とは思えないほど其の態度は神々しい。尤も彼女もこの混乱を望んでいる訳ではない。混沌の女王たる身でありながら彼女がそう考えているのは、この騒ぎが自分の手に余る出来事だからである。余談だがこの事件のせいで、Type6 Demon(ベイラー)のエルトゥの100年に渡るFR世界への介入禁止が消滅し、彼は次回作で再びドリストとの邂逅を果たす事になる。
 で、肝心のドリストであるが、彼はBracers of the Blinding strike(暇な人はマジックアイテムリストで調べて見よう。かなり強いアイテムだ。)を足に着用して移動能力を加速すると言うとんでもない離れ業をやってのけるあたり、やはり只者ではない。この話のラストでドリストはキャティ・ブリーと共に旅に出る。普通ここまでくればカップルとして成り立つ筈なんだけれど…ボンクラだねぇ。

Passage to Dawn

 前作から更に時間が過ぎても尚、相変わらずその関係に発展もへったくれも無く旅を続けていたドリストとキャティ・ブリーの二人が『海の小妖精』なる船に乗り込み、数奇な旅を経て再び嘗ての仲間と再会し(ついでに逢いたくも無いエルトゥとまで)、エルトゥが捕らえていた『彼』を解放するまでを描いている。
 エルトゥはクレンシニボン獲得の邪魔をしたばかりか、自分のマテリアルボディを破壊したドリストに対して喩え様も無いほどの恨みを抱き、何とかして物質界に再び返り咲こうと画策していた。そんな時にタイムオブトラブルが発生し、彼の制限はリセットされた。さあ、復讐の始まりだ、とエルトゥは神様でもないのにドッペルガンガー等の刺客を送り、その一方でドリストと早く邂逅できる様に予言者に啓示を与えてドリストに目的を与えたりと、非常に忙しく立ち回る。無論、エルトゥの最大の目的はクレンシニボンであり、かの魔遺物を入手する為にも彼は是非とも誰かの力を借りてFaern主物質界に現れる必要があった。
 その頃、死去したウルフガーの形見であるイカサマなサンダーボルトハンマー・イージスファングを巡ってブルーノー達ドワーフと蛮族との間にきな臭い空気が漂っていた。エルク族は族長こそがかのハンマーを所持すべきであると主張するが、ブルーノーはあれはウルフガー以外には使わせないと一歩も退かない。対立は深まるばかりだった。
 ドリストは旅の最中に出会った盲目の老女に奇妙な予言を聞かされる。その予言が『ルロス(ロルス)に与えられし者を解放せよ』と言う内容だった為、彼はその『ルロスに与えられし者』が、嘗て自分の為にマトロンマザーによって非業の死を遂げた父、ザクナフェインだと考えた。しかし、仮にも女神に囚われた魂を解放する事が可能なのだろうか。彼は雲をも掴む思いで高名な僧侶、カダリーに逢いに行く。
 そして、エルトゥがドリストをおびき寄せる為に蒔いた餌となった『彼』は、女神ロルスの侍女・ヨクロルに捉えられてそのまま奈落界に連れ去られていたのである。永遠に終わらない苦痛の中、『彼』は起死回生の機会をずっと伺っていた。果たして『彼』とは?
 前作に比べると派手さが無いが、奈何せんDemon一匹で物語を引っ張ろうとしたのだから仕方が無いか。そう云う訳で、余り特筆すべき部分があると言う訳でもないのだが、本作品の中盤でハークル・ハーペルと魔術師ロビラードの海上での魔法談義が馬鹿馬鹿しくてお気に入り。正確にはサルガッソのような場所でゾンビどもに襲われている最中の出来事なのだが、流石にこんな高位のキャラクターにとってはゾンビ程度如何程の物でもない。で、まるで射的遊戯のノリで魔法使いが攻撃魔法を無駄撃ちしつつ自分の力を見せ合う。少々長いので割愛するが、彼らの言葉からするとMelfもBigbyも他世界の人物なんかではなく、過去に存在した人物と言う事らしい。そう云えば、どっかの和訳作品でもそんな事云ってたな。  本作品で突然湧いて出てくる僧侶・カダリーは、同じFR世界を舞台にした作者の『Cleric Quintet』シリーズの主役であり、Heroes' Lorebookによると20LVのDeneirの僧侶である。『Cleric Quintet』後の客演だけあって、嫁さんのダニカ(11LVFig.但しこの女もイカサマなキャラクターである)や仲間のドルイドドワーフ、ピケールらと悠悠自適な生活を送っている様である。流石にご本人自ら出張るような真似はしなかったが、結局本作品で一番でかい事をしたのは彼かもしれない。
     

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