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メンタルトレーニング  シリーズ6

ストレスの解消

    ここでは、メンタルトレーニングでのストレスの解消方法と対応方法を紹介しましょう。ストレスのたまりやすい人、体調の優れない人、緊張しやすい人は参考にしてください。

   『ストレス』は1956年に、カナダのハンス・セリエ博士が唱えたもので、彼は生体に有害な刺激を与えると、生体の体内でさまざまな反応がおこり歪みが生じることを発見しました。この生体の歪みを『ストレス』と呼ぶことにしたのです。
   『ストレス』が発生すると、その刺激に優先的に対抗するため、自律機能の調整が低下します。不安や不満が長時間続き『ストレス』がたまると、体の調子を整えている自律機能のバランスが崩れ、心身症や神経症になってしまいます。
   しかし、ストレスはなくなればよいというものではありません。我々生体にはストレスに立ち向かうことにより、結果として成長し進化する機能があります。その意味では、ストレスは必要な刺激でもあるのです。
   例えば、熱さや寒さといった自然の環境の変化もストレスですが、熱いからとクーラーのきいた部屋に入り、寒いからと暖房のきいた部屋に入っていると、体温の調節ができない体になってしまいます。
   ストレスを避けているだけでは体の成長や進化を妨げることにもなるのです。その意味では、ストレスを避けるよりストレスを克服する方が大切といえます。まず、ここでもう一度メンタルトレーニングの方法をまとめておきましょう。(ここでは、スポーツで使われる手法を中心に書いてあります。)

1、リラクゼーション              リラックスする

2、サイキングアップ      気持ちを高める

3、イメージトレーニング    イメージする

4、ポジティブシンキング    プラス思考

5、セルフコンディショニング   体調を整える

6、コンセントレーション     集中する

 以上のようなものがあります。

実際にはそれぞれが単独で使われるよりも、併用して使われることの方が多いようですが、ここではあえて1〜5までの方法について説明していきましょう。

 1、『リラクゼーション』

   これは、リラックスし気持ちを落ち着けることで、緊張などのストレスを解消します。簡単なリラクゼーションの方法には次のものがあります。

   『呼吸』による方法
   呼吸は身体のなかで唯一意識下でも無意識下でもコントロールできる動作です。意識的に呼吸をすることにより、無意識をコントロールすることができるのです。ゆっくりした呼吸をすることで、心拍数も変わってきます。特に、ゆっくりとした腹式呼吸がよいとされています。

   『音楽』による方法
   クラシックなどの音楽を聴くことで、精神的にリラックスすることがわかっています。最近は、「ストレス解消」「気分転換」「創造力アップ」などの音楽CDが発売されています。また、歯科医などでも痛みを和らげる目的で音楽が使われています。
(例)イライラの解消には     :ストラビンスキーの『春の祭典』
   気持ちを穏やかに静めるには :メンデルスゾーンの『無限歌集』
     疲れたときには       :ヴィヴァルディーの『四季』

『香り』による方法
   香りを嗅ぐことで、興奮効果や鎮静効果があることがわかっています。心拍数や呼吸数にも変化を与えます。最近は「アロマテラピー」として、いろんな精油が販売されています。また、オフィースの空調で、朝はシトラス系の香りで気分を高揚させ、昼はウッディー系の香りで疲れを癒し、夕方はフローラル系の香りで集中力をあげるように使用しているところもあります。
(例)鎮静効果のあるもの     :カモミール、レモン、サンダルウッド

2、『サイキングアップ』

   これは、落ち込んでいるときに、気分を盛り上げていく方法です。リラクゼーションが抑制・鎮静効果であるのに対し、サイキングアップは覚醒・興奮効果になります。ただし、この方法はリラクゼーションと違い、データや事例があまりありません。簡単な、方法は次のようなものです。

『呼吸』による方法=スポーツなどでは、速い呼吸をすることで快調なリズムをつくっていきます。一般的には、「フッ、フッ」強く息を吐くことで気持ちを向上させます。

『音楽』による方法=自分の好きな曲や、テンポの速い明るい感じの曲を聴きます。例えば、ロッキーのテーマやディスコミュージックなどです。速いテンポが嫌いな人は、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」などもよいでしょう。

『香り』による方法=興奮効果のある香りを嗅ぐことです。
(例)興奮効果のあるもの    :ペパーミント、バジル、ローズ

3、『イメージトレーニング』

   これは、イメージすることで、リラクゼーションやサイキングアップの手助けをします。また、ストレスの要因になっているものを忘れ、楽しいことを想像することで気分を変えることができます。
   一般的に、不安や不満があるときには、次々に関連した不安や不満を考えてしまいます。しかし、これが曲者なのです。不安や不満がつのると、心配になったり腹が立ちます。心配になるとアドレナリンというホルモンが分泌されさらに心配になり、腹が立つとノルアドレナリンというホルモンが分泌されさらに腹が立ちます。人間の脳は、そのようにできているのです。この悪循環を止めるには、不安や不満を忘れるか、もしくは考えないことです。
   しかし、実際は忘れようと思ってもなかなか忘れられるものではありません。そこで、忘れるのでなく他のことを考えるのです。自分が一番やりたいことや自分の夢の実現をイメージするのです。すると、楽しいときにでるホルモン、ドーパミンなどが分泌され、本当に気分がよくなり、満足した気分になります。
   人間のイメージには、気分を変えるだけでなくガンまで治す力があるといわれています。『サイモント療法』という療法は、アメリカの医者であるカール・サイモンが提唱したもので、末期ガン患者にイメージを描かせ治療するという心理免疫療法です。主として、『リラクゼーション』と『イメージング』により、満足な気分を想像体験することで肯定的な活動のホルモンの分泌を促し、ガン細胞を破壊させるナチュラルキラー細胞を増やします。このようにして、ガンを退治するのです。

4、『ポジティブシンキング』

 これは、積極的な考え方や心のもち方でストレスを克服するものです。例えば、学校や会社で大掃除をすることになったとしましょう。マイナス思考の人は「掃除なんてイヤダ!やりたくない。」と考えるでしょう。そして、いつまでも掃除することにこだわっていることでしょう。しかし、積極的な人は違います。「どっちみちやらなくてはいけないのなら速くやろう!」と仲間を励まして掃除を積極的にすすめます。結果として、前者の場合は嫌な思いをしたうえに、掃除に時間もかかるでしょう。後者の場合は、リーダーシップを発揮しながら短時間で掃除をすませるでしょう。マイナス思考の人と、プラス思考の人ではこの様に違いが生まれるのです。また、よく腹を立てている人がいますが、怒りは最も体に悪いとされており、大きなストレスを抱えることになります。では、なぜ腹が立つのか考えてみましょう。
 心のなかには、これを越えると腹が立つという基準(ハードル)があります。よく怒る人は、このハードルが低いためにすぐ腹が立ちます。物事を「〜でなければならない」と決め付けているからです。大らかな気持ちの人は、このハードルが高いためになかなか腹が立ちません。あなたのハードルはいかがですか? もし低いのなら、高くしてはいかがでしょうか?

5、『セルフコンディショニング』         

   セルフコンディショニングは、心身の調子を整えるものですが、『自律訓練法』という有名な方法があるのでそれを紹介しましょう。

『自律訓練法』は、ドイツの神経科医であるヨハネス・ハインリッヒ・シュルツが提唱した心身症や神経症の治療法です。この原理は『リラクゼーション』と『イメージング』を利用し、下記の6つ公式(動作)を暗示により行い、心身のバランスを取り戻し、健康な状態をつくるものです。

第1公式      手足が重たく感じる。
第2公式      手足が暖かく感じる。
第3公式      楽に呼吸をしている。
第4公式      規則正しく脈打っている。
第5公式      おなかが暖かく感じる。
第6公式      額が涼しく感じる。

以上のように、メンタルトレーニングの方法を活用してストレスを克服することができるのです。

2001/7/1


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