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五感と感性に訴える売り場づくり

 わたしたちは、毎日様々な情報を視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感で受け取り、頭の中で解釈・イメージし、商品購入の判断をしています。お店が提供する情報の善し悪しが商品購入を決めているわけです。では、どうすれば商品を買ってもらえるのか。それは顧客の購買心理を理解し、五感を通して感性に訴える売場づくりに心がけることではないでしょうか?
我々が受け取る情報は概ね、視覚70〜80%、聴覚10〜20%、触覚5%、嗅覚3%、味覚2%と言われています。最近は、視覚情報が増え約90%と言うデータもあります。そこで売り場では視覚を重要視し、VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を導入し、商品企画したものを消費者にわかるように訴える訳です。ここでは、視覚、聴覚、嗅覚を通して感性に訴えかける売場づくりを考えてみたいと思います。

なぜ、理性でなく感性に訴えかけるのか。それは、最近の車で成功しているCMをみるとよく分かります。機能を説明するのでなく、その車があることで得られる便益・メリットを訴えています。家族でキャンプに出かけるシーンや思い出を作るシーン。機能が理性に訴えるのに対し、楽しいことや思い出は感性に訴えかけるのです。実は人の好みは、理性でなく感性が決めているのです。とくに女性の場合は、感性を大切にしています。

まず、視覚による売場の例をあげましょう。例えば、暖色系の色は食欲を増進させる効果があり、スーパーの入口で使われています。店内に入ると必ず果物売場があります。りんごの赤、レモンの黄、みかんのオレンジ色などいろんな果物の色が目に入り食欲を増進させ、少し大目の買い物をするというわけです。さらに、鏡を利用し果物を映すことで、ボリューム感をだし、賑わいを演出するとさらに顧客を買う気にさせます。
文字表現による効果も大切です。例えば、りんごを割引する時、「りんご半額」と書かずに「リンゴを2個購入すると、2個目は無料」と表現した方が売れるのです。店としては、2個目無料の方が、1度に2個売れいいのですが…。なぜか、顧客は「半額」より、「無料」という言葉に引かれるのです。明らかに、理性ではなく、感性の世界です。

聴覚、いわゆる音楽では、昔から売上をアップするBGMがあります。ほかに、季節感やテーマをあらわす曲があります。クリスマスソングやお正月の歌がそうです。この曲を聴くと、特別な気分になり、ついつい商品を買ってしまいます。最近では、「おさかな天国」の歌を流すと魚の売上がアップすることで話題になりました。何気なく耳にはいってくる言葉に、我々は影響を受けているのです。そういえば、かつて「たい焼きくん」や「団子三兄弟」のヒットにより、たい焼きと団子が爆発的に売れました。店内で、そのコーナーの商品を紹介した曲を流すのは有効な手段です。「お菓子の歌」や「たこ焼きの歌」もあります。音楽をもっと有効に活用することです。

 嗅覚は匂いですがこれがくせものです。昔から、うなぎの匂いを嗅いで、夕食はうなぎに決まりなんてよくあることです。実は、匂いの影響力は、非常に大きいのです。例えば、視覚と嗅覚によるカレーの食欲実験があります。Aのグループはカレーを見るだけ、Bのグループは匂いを嗅ぐだけ、どちらのグループが食欲をそそられるか唾液の出る量が測ろうというわけです。実験の結果は、カレーは見るより、匂いを嗅ぐ方が、唾液の量が多く、匂いの影響の大きいことが分かりました。情報量は、視覚の方が多いのでしょうが、食欲をそそるのは嗅覚の方だったのです。パンのいい匂いがするとパンが食べたくなり、焼肉のいい匂いがすると焼肉が食べたくなる理由が、理解頂けたでしょうか?
また、嗅覚は味覚にも大きな影響を与えています。例えば、鼻をつまんで、りんごとジャガイモを食べると区別がつかないのです。味覚情報の多くは、嗅覚から得ているのです。風邪を引いて鼻が詰まっている時、食事の味を感じないのは、匂いを感じることができないからなのです。
そのほか、匂いのすばらしい利用方法をお教えしましょう。例えば、コタツを販売する時ある仕掛けをします。みかんの香りをほのかにコタツに付けるのです。すると、お客さまは、そのコタツになにかを感じるのです。なんとなくアットホームなイメージを持つのです。理由は、みかんの香りが無意識にコタツを囲む家族団欒のイメージを呼び起こしているのです。これはサブリミナル効果(注1)になるのでしょうか。決して、付加機能としてみかんの香りが付いていると言ってはいけないのです。

これらの五感を上手く組み合わせることで、さらに売上をアップすることができるでしょう。例えば、前出のスーパーの果物コーナーですが、「くだものの歌」なる曲があるならばそれを流す。さらに、視覚効果をアップするために、くだものの切り口を見せるサンプルを置く。くだもの甘酸っぱい柑橘系の香りが売場に広がり、口の中に唾液が広がる。果物をデザートに購入すれば、その日の夕食は、デザートまで出てくる豪華な食事になるわけです。


(注1)サブリミナル効果
普段見えていないもの、聞こえていないものが、無意識レベルでは感じ取っているというもの。アメリカで行われたコカコーラのサブリミナル(=潜在意識)実験は有名。1957年アメリカのドライブイン・シアターで「ピクニック」という映画の上映中に「DRINK COKE(コーラを飲もう)」「EAT POPCORN(ポップコーンを食べよう)」という文字を気づかれないように何度も挿入しました。実験の結果は、コカコーラの売上げが18.1%、ポップコーンの売上げが57.7%も増加したというのです。この実験をしたジェームズ・ビリカーは、この実験は正確でなかったとコメントしていますが、別の実験である程度の効果が分かっています。

2003/8/3


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