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大阪販売士協会 会報紙「大阪販売士」第84号より

売れない時代の感性マーケティング(3)
−潜在意識へのアプローチ−

     (有)ニーズ創造研究所 代表取締役/マーケティングプランナー 植田 真司

  21世紀のビジネスは、経営学ではなく心理学であると,第1回目に書かせていただきました。なぜ心理学が重要であるのかもう一度説明しますと、我々はものごとの好き嫌いや商品購入の意思決定を、理性で判断しているようで実は感性で行っているからです。これは、商品の直接の情報だけでなく、商品の回りの様々な情報により、こころの奥の無意識で判断していることを意味します。その事例を紹介しましょう。

  まずは、サブリミナル(潜在意識下)知覚。これは、普段見えていないものや、聞こえていないものを、実は無意識レベルで感じ取っているというものです。ここで、アメリカで行われた有名なコカコーラのサブリミナル(=潜在意識)実験を紹介しましょう。1957年アメリカのニュージャージーのドライブイン・シアターで「ピクニック」という人気映画が上映されていました。この映画の中に1000分の1秒という観客にはまったく気がつかないような短い時間、「DRINK COKE(コーラを飲もう)」「EAT POPCORN(ポップコーンを食べよう)」という文字を、5秒に1回挿入して見せました。実験の結果は、売店でのコカコーラの売上げが18.1%、ポップコーンの売上げが57.7%も増加したというのです。その後、この実験をしたジェームズ・ビリカーは、この実験は正確でなかったとコメントし、サブリミナル効果の真偽は分からないままになっていましたが、ある程度の条件下では効果があることが分かっています。

  我々は、お客さまが気づつかなければと、つい手を抜いてしまったり、気が緩んだりします。しかし、お客さまは、しっかりと気づいているのです。そして、商品を購入する時、そのことが購入の判断材料になっているのです。

  あるハンバーガー店は、利益を出すためにハンバーガーの肉の重量を1g少なくし経費を削減しました。どうも客は気がついていない様なので、さらに1g、そしてまた1g軽くしたのです。本当に客は気がついていないのでしょうか? 実は、ごくわずかの客はこの変化に気がついて、この店から離れているのです。気がつかなかったのは客ではなく、ハンバーガー店だったのです。

  客様に満足してもらうためには、お客さまは何でも気づいていると考え、常に細かい所までこだわることです。「エクソシスト」というホラー映画がありますが、この映画では観客に少しでも本物の恐怖を味わってもらおうと、実際の怒って興奮している蜂の音や殺される前のブタの脅えた泣き声を音響効果として使ったのです。

  また、本町にある有名なフランス料理のシェフは、店内を毎日少しづつ変えているそうです。誰も気づかないほどの変化かなのですが、こうすることで客は何か違うと無意識で感じるというのです。これが、客をあきさせない方法だそうです。

  次に、知覚の錯覚があります。これは、商品以外のものから受ける感情や感覚を、その商品から感じているように錯覚することです。たとえば、気がつかないように無意識下で怒った表情の顔を見たその後にまったく関係ないものを見ると、そのものに対して嫌な印象を持ち、幸せな表情の顔を見た後に物を見ると、そのものに対して良い印象を持つのです。このことから、マクドナルドの店員の笑顔は、実は我々に気づかないうちに快い印象を与えていることがわかります。

  遊園地でジェットコースターに乗った後に恋の告白をすると、OKをもらう確率が高くなるといわれています。これも、ジェットコースターのドキドキを、恋のドキドキと勘違いして刺激的な恋愛だと錯覚してしまうからです。

  料理をおいしいと感じさせるのは、味だけではありません。お料理の香り、盛り付け、盛られた器、お店の雰囲気、流れる音楽、何気なく飾られた花、あらゆることが料理の味に影響してくるのです。

  これらのことから言えることは、我々が商品とは関係ないと考えているようなことにも、細心の注意を払う必要があるということです。お店に落ちているゴミもその一つです。お店の汚いというイメージは、商品が汚いというイメージを連想させ、購買に大きな影響を与えるでしょう。
  この様に、21世紀は心の時代であり、どこにこだわりを持って顧客の潜在意識に訴えかけるのか、これに気づく感性が重要というわけです。

 

2001/12/31


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