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季刊「QHO」
短期集中連載(下)
売れない時代の感性マーケティング
(有)ニーズ創造研究所 代表 ・ 植田 真司

 前回は、顧客の五感に訴えかけ購買意欲を高める方法を説明しました。今回も引き続き、顧客の購買意欲が高まるときはどういうときなのかを考えていきましょう。
2・1 安心感を与える。
 多くの人は、商品の価格や品質、色、デザインなど比較することで安心し購入します。比較するものがないと、次の店に行ってしまうでしょう。ユダヤ商法の中に、こんな話があります。オーナーは土産店を2店持ち、A店では通常の価格で商品を販売し、B店では同じ商品を高い価格で販売しす。A店では訪れたお客様に「うちは安いよ、隣のB店と価格を比べておくれ」と説明します。顧客はB店に行って価格を確認します、すると確かにB店の価格が高い。そこで、顧客はA店が安いと勘違いして商品を購人するわけです。顧客の心をうまく利用した例です。
また、我々は多くの人が使っているものやよく売れているものなどを安心して購入します。創業60年や、予備校の合格率〇〇%など訴えるのもその表れです。他に、野菜や果物など育てた人を紹介する方法もあります。すべて、顧客の安心を得るためなのです。
2・2 商品を選びやすくする。
 すし屋に『松・竹・牌』のメニューがあります。顧客心理としては、松は高すぎる、梅では安すぎる、間をとって竹にしようということになり、竹の注文が多くなるのです。最近は、安いものを購入するお客様が増えていますから「特上・上・並」と表示するのもいいでしょう。お昼のランチでは、「本日のサービスランチ」があります。「本日のお買い得品」というのもあります。これらは、商品を選択くしやすくし、顧客の注文をコントロールしているのです。
また、商品を選択できるようにするにはある程度の品揃えが必要になり、そこで問題になるのが在庫の問題です。しかし、品揃えをしながら在庫を抑える方法があります。それは、明らかに売れ筋の商品を作っておくことです。例えば、車で、A・B・Cのラインナップを設定したとします。Aは、フル装備で価格設定は高く、不要なものまで装備されています。Bは、必要なものだけがパックで装備されお買い得になっています。Cは、何も装備されいないため、必要なものをオプションで装備することになり割高です。明らかにお買い得で売れるのはBの車です。あらかじめ、売れる車を設定し、準備しておくのです。
2・3 心にゆとりができるとき。
 
コンビニやスーバーマーケットでは購買金額が滞在時間に比例するというデータがあります。アメリカでの調査によるとコンビニでの女性の平均買物時間は平均13分54秒。そこで、無料のコーヒーをサービスすることにしました。すると、買物時間は16分42秒になり、1人当たりの売上が18%UPしたそうです。目本でのコンビニの客単価が約800円ですから、18%UPは、約150円の売上アップになります。一杯のコーヒーを飲むことで心が豊かになり、購買意欲が高まるということではないでしょうか?

2・4 購入する理由ができたとき。
 顧客は商品を購入するとき、本当に購入すべきかどうか迷っているものなのです。そこで、購入する理由、贈り物する理由を創ってあげればスムーズに購人してもらえるのです。例えば、女性はいくつになってもピンクの服を着たいものだそうです。しかし、年をとると、自分でピンクの服を購入するのが恥ずかしくて、ついつい無難に地味な色の服を買ってしまうのです。ここで店員さんが一言「ピンクがお似合いですよ」と薦めてあげれば、お客様とすれば、自分でなく店員さんに薦められたという理由ができるのです。
また、「誕生日」「結婚記念日」「父の日」「母の日」「子供の日」など記念日は贈り物をする理由が明確な日です。最近は「孫の日」(1999年に日本百貨店協会が提唱)が10月の第3日曜日に設定されました。「バレンタインデー」の1ヶ月後が「ホワイトデー」のように、「敬老の日」の1ヶ月後に設定してあるそうです。おじいちゃんからのプレゼントを期待して、孫が敬老の日におじいちゃんにプレゼントをするわけです。実にうまく仕掛けられています。
2・5 欲しいときに欲しいものや情報がある。
 顧客が欲しいものを、欲しいときに提供する。これはマーケティングの鉄則でもあります。
例えば、気温が22℃を超えるとビールが売れ出し、気温が27℃を超えるとアイスクリームが売れ出し、気温が30℃を超えるとエアコンが売れ出すそうです。このようなデータを活用することは大切なことですが、注意が必要です。実は、気温が高くなるといつもアイスクリームが売れるというわけではないのです。人の生理的現象から、27℃からさらに温度が高くなると、欲求するものがアイスクリームからかき氷などの氷菓子に代わり、さらに気温が上がると水に変わって行くのです。常に、顧客のニーズを探ることが必要なわけです。
商品だけでなく、会社や商品を宣伝するCMや看板、チラシも顧客が欲しいと思うときに、情報提供できることが大切です。例えば、海外旅行の帰り、「もう少し英語がしゃべれたら、海外の友達もできて、買物ももっと楽しかったのにな…」なんて考えながら空港に到着すると、その目に前に英会話学校の看板が出てくる。おもわず、「英会話でも習ってみるか…」ということになるわけです。
商品やその広告宣伝を、いつ、どこで、どのように提供するか、もう一度考えてみてはいかがでしょうか?
2・6 購買決定の判断基準を変える。
 派手な洋服がお店のショーゥインドウに飾られていることがあります。決して、購入しようと思うような商品ではありません。実は、「この洋服を買ってください」といっているのではないのです。「この洋服が今の流行なんですよ」と訴えかけているのです。「ショーウインドウのあの服が流行っているのなら、これぐらいなら派手ではない…。」と顧客の購買決定の基準を変えるのが目的なのです。基準が変わることで、決定基準が甘くなるわけです。
2・7 楽しいとき。気分がいいとき。
 商品を購入する人の価値観には2種類があります。一つは「できるだけ安いもの(コストバフォーマンス)を求める価格価値」、もう一つは「買物自体に楽しさを求める心理価値」です。
ユニクロやギャップが話題になったたのも若い男女やファミリーが楽しみながら商品を購入することができたからです。デパートでは、婦人服売場と、紳士服売場が別の階にあるから夫婦で一緒に買物が楽しめないのです。お店を楽しくするには、音楽をかける。楽しそうな制服を身につける。店内を明るくデコレーションする。明るい笑顔での挨拶するなど、様々な方法があります。とにかく、お客様に感動し、共感してもらうことです。
お店のコンセプトも重要です。化粧品店は、「化粧品を売るのでなく、美しく変身する希望を提供する」。靴屋は「靴を売るのでなく、快適なウォーキングを提供する」など、顧客を楽しませる方法を考える必要があります。そこで、大切なことは、まず、店員さんが楽しんでいること。顧客を楽しませるお店の店員が楽しくなければ、顧客も楽しくないのです。店員は売場のお客様を楽しませるための演出家であり、プレゼンテーターなのです。
(*これらの情報は平成14年10月時のものです。)

2003/1/1


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