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季刊誌 QHO 
短期集中連載(上)
売れない時代の感性マーケティング
(有)ニーズ創造研究所 代表 ・ 植田 真司

 21世紀は心の時代。「商品を研究する時代」から「顧客の心を研究する時代」に変化しています。
一昔前は、よい商品であれば何でも売れました。しかし、今ではよい商品でもそう簡単には売れなくなってしまいました。原因は、「景気低迷」といわれていますが、決して、「景気低迷」だけが原因ではないでしょう。顧客は必要なモノをすでに所有しており、どうしても欲しいモノがないというのが真相でしょう。顧客の求めるニーズは多様化・個性化し、従来の商品を、従来の方法で提供しても欲しいと思わなくなってしまったのです。
そこで、顧客の心の底にあるニーズを理解し、欲しい買いたいという気持ちになってもらわなければならないのです。すなわち潜在ニーズを顕在ニーズにする仕掛けが必要なのです。だからこそ、モノの研究ではなく、顧客の心の研究をする時代なのです。「顧客が求めている真のニーズは何か?」「顧客はどんなときに商品を購入する気持になるのか?」これらの顧客の購買心理を知ったうえで、アプローチしなければならないのです。重要なことは、「顧客の購買心理を科学的にとらえること。心のそこから顧客満足を考えること」です。では、具体的に顧客がもの購入するときとはどのような時なのでしょうか?顧客の購買欲求を高めるしかけを考えていきましょう。

どんなとき、購買意欲が高まるのか?
1・1 現物が購買欲求を引き出す。
 お昼に、うどんでも食べようかと飲食街を歩いていると、どこからかとてもいい匂いがしてくる。これは、うなぎの匂いだ!思わず蒲焼きが食べたくなり、お昼のメニューはうどんから蒲焼に変更で決まり。人間は、頭の中にイメージを作り、そのイメージをもとに比較・選択します。想像の世界のうどんよりも、実際に感じる蒲焼の匂いのほうが強い欲求を引き出すということがわかります。
現物を「見る」「聴く」「嗅ぐ」「触る」「味わう」「使う」などの行為はより強いイメージを描かせます。まさに、試食や試着などは、購買意欲を高める仕掛けといえます。また、試食や試着には、購買に対する不安を解消してくれる効果もあるのです。
1・2 暗示による購買欲求。
 食事のとき、おいしいと思うとおいしく感じ、まずいと思うとまずく感じるものです。有名なシェフが料理していると聞くと、きっとおいしいと思う。この、おいしいという期待が、評価を変えてしまうのです。
ブランドにもこのような力があります。A社のスポーツシューズのデザインはかっこいいが、B社のデザインはカッコ悪いという。しかし、ブランドを隠した目隠しテストでは、同じ評価なのです。これらは、先入観による暗示といえます。最初に良いイメージを創ることが大切です。

1・3 POPや広告のキャッチコピー
 
どこどこで取れた〇〇と産地をつけると、いかにもおいしく感じるもの。例えば、梅干しの価値を上げるコピーを考えてみましょう。
  • 原産地の表示・・「和歌山〇〇の紀州梅」
  • 本場や元祖の使用・・「本場、和歌山〇〇産の紀州梅」
  • 商品の説明・・「有機栽培で育てられた、本場和歌山○〇産の紀州梅」
  • 生産者を紹介=共感させる・・「土居さんが真心こめて、有機栽培で育てた、本場、和歌山〇〇産の大粒紀州梅」
このように、ことばを加えるだけで、商品の魅力をアップさせることができるのです。

1・4 シズル効果を利用する。
 シズル効果とは、ステーキの「ジュゥー」という音が、おいしさを演出するように、本来の主となる感覚でない他の感覚(この場聴覚を利用すること、相乗効果のことです。料理は、味だけの勝負ではなく、見て、聞いて、触って、味わって、五感で味わうものです。テーブルクロス、絵画や花、音楽、ウエイター(店員)の服装や態度、メニュー、食事を共にする相手や会話の内容など、さまざまな要因で楽しむことができるのでま。これらのシナジー効果を利用できるのは、食事だけではありません。例えば、水着売り場では、海のポスターを貼り、南国を思わせる音楽を流し、貝殻やヤシの実や木などを飾り、南国の演出で、気分は常夏の海。きっと水着の購買意欲は高まるでしょう。
1・5 希少価値を訴える。
 人は、少ないものに価値を感じるものです。これは、宝石と同じです。通信販売では、「提供数は限定20」とか、「本日限り」とか、購買意欲を高める仕掛けが使われています。家具や車の場合は、売買が成立していることを示し、活気を演出する「予約済み」・の張り紙が使われます。しかし、もっと効果のある張り紙があるのです。それは「商談中」の張り紙です。人は、「商談中」を見ると思わず自分も欲しくなり、店員に声をかけるのです。
(次号へ)

(*これらの情報は平成14年7月時のものです。)

2003/1/1


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