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高齢者にスポーツを! − 運動不足が寝たきり老人をつくる −

高齢者への介護について考えてみたとき、日本では高齢者に対する考え方が過保護過ぎるのではないかと思う。体の調子が悪くなるとすぐ横になって寝かしたがる。結局はそれが原因で寝たきりになってしまうのではないだろうか?老人ホームでも、最初は歩いている人が、1ヶ月もしないうちに歩けなくなってしまい、車椅子に乗っていると言う。原因は、「歩いているとこける危険性がある」「老人が歩いていると時間がかかり職員の作業がはかどらない」これらの理由で車椅子に乗せて移動するためである。これでは、老人ホームで歩けない老人を作っているようなものである。

  このためか、アメリカでは寝たきり老人が約20万人であるのに対して、日本で100万人を超えていると言う。明らかに、高齢者の扱い方に間違いがあるようだ。また、電動式の起き上がりベッドがどのような目的で購入されるのかについても、日本と欧米に差があるようだ。日本では、体を起こしてテレビを見たり、ご飯を食べたりすることが目的で購入される。しかし、欧米ではベッドから起きて、歩くために購入すると言う。どちらの考え方が、高齢者にとって大切であるか分かる。

  厚生省では、25年後に寝たきりの老人が230万人になると予測している。一体だれが寝たきりの老人を作っているのか? また、だれが彼らの面倒を見るのだろうか?ヨーロッパでは80歳の高齢者でも、地域のスポーツクラブで元気にスポーツを楽しんでいると言う。しかし、日本では、スポーツを楽しんでいる高齢者をあまり見かけない。当然、高齢者のスポーツを行っているところも思い浮かばない。これが、日本における高齢者のスポーツ参加の現状なのだろう。日本のスポーツは、ほとんどが学校体育やクラブ活動を中心に参加しており、学校卒業と同時にスポーツから遠ざかるのが一般的である。仮にスポーツを続けても、それはウォーキングやフィットネスクラブなどの個人でできるスポーツである。今後は、子供から高齢者までがスポーツに参加し、みんなで楽しめる機会を作ることが必要だ。ただし、高齢者がどのような運動をしてもよいわけではない。高齢者の運動は、筋・骨格系の損傷や心臓の不整脈など、加齢と共に損傷率が増大すると言う意見(シェファード 1979)もある。そのために、「高齢者の運動は医療費を減少させるのでなく、増加させることもある」といわれている。また、一般的には運動強度を管理する基準として心拍数が使われるが、高齢者においては心拍数が上がらず血圧が上がる傾向にあり、心拍数だけで管理するのは危険とも言われている。筋肉の鍛練においても、筋力アップよりも先に軟骨を摩損したり、関節を傷めてしまい、結局は筋力が減少することもあるという。

  競技力向上の研究も必要だが、今後は、高齢者の運動についてさらに研究されるべきである。もっと現実の問題に直面した高齢者の健康維持から運動について研究してもらいたいものである。高齢者における運動の研究と、高齢者の運動できる環境作りを、真剣に考えなければならないときにきている。

2001/1/14


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